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EU競争法上、入札談合は、目的による違法(by object)の類型に該当し、例外なく違法と判断される可能性が高いといえます!
入札談合に関わる問題 |
TFEU条約第101条第1項の文言上、企業間の協調的行動は、広くその適用対象となります。その結果、同条項の文言による限り、同第2項に基づき、企業間のほとんどの協調的行動が無効となります。1項の文言は以下の通りです。
1. The following shall be seen as incompatible with the internal market: all agreements between undertakings, decisions by associations of undertakings and concerted practices which may affect trade between Member States and which have as their object or effect the prevention, restriction or distortion of competition within the internal market, and in particular those which:
(a) directly or indirectly fix purchase or selling prices or any other trading conditions;
(b) limit or control production, markets, technical development, or investment;
(c) share markets or sources of supply;
(d) apply dissimilar conditions to equivalent transactions with other trading parties, thereby placing them at a competitive disadvantage;
(e) make the conclusion of contracts subject to acceptance by the other parties of supplementary obligations which, by their nature or according to commercial usage, have no connection with the subject of such contracts.
他方で、企業間の協調的行動のすべてを無効とすることは、経済的実情にそぐわないが、EU競争法は、このような事態を避けるための方策として、反トラスト法における合理の原則を採用するという方法をとらず、EUに特有の適用除外審査基準を採用しています。
すなわち、欧州委員会は、競争制限的効果が、知覚できる(appreciable)程度に達しない協調は違法としませんい。この知覚できる程度という要件は、デ・ミニマス・ドクトリン(de
minimis doctrine)として広く認知されています。欧州委員会は、1970年に、小さい契約に関する告示を出して、デ・ミニマス・ドクトリンの内容を明確化しました。その後、当該告示は、数回改定されて、最近のものは、2001年OCJ368/13です。
同ガイドラインは、以下のように定め、デ・ミニマス・ドクトリンの内容を具体的に明らかにしています。
@ 競争関係にある企業の間での契約については、関連市場における契約当事者の市場占有率の合計が10パーセントを超えないときは、TFEU条約第101条第1項の対象とはしない。
A 競争関係にない企業の間での契約については、関連市場における各契約当事者の市場占有率が15パーセントを超えないときは、TFEU条約第101条第1項の対象とはしない。
B ただし、累積的な取引排除の効果があるときは、競争関係のあるなしにかかわらず、契約当事者の市場占有率の上限は5パーセントとする。
以上によれば、入札談合のようなハードコアについても、合計の市場占有率が10パーセントを超えなければ適用除外となりそうなのですが、目的による違法の類型に該当する入札談合のようなハードコア・カルテルについては適用除外を受けることができないものとして運用されています。Case
C-226/11 Expedia事件にて欧州司法裁判所は、目的による違法の類型では、適用除外の余地がないことを明確化しています。
なお、2023年6月1日に改訂された水平的協調ガイドラインによると、以下のような情報交換は目的による違法の類型に該当するとされ、入札に関わる情報交換そのものが問題視されることがあり得ることには留意が必要です。 ・ 価格設定(又はその意図)に関する情報
・ 現在及び将来の生産能力に関する情報
・ 商業上の戦略に関する情報
・ 現在及び将来の需要への対応状況に関する情報
・ 将来の販売に関する情報
・ 現在の状況及び事業戦略に関する情報
・ 需要者にとって関連性のある将来の製品特性に関する情報 |
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