International Cartel Watch 2016 (vol 2) |
個人責任 |
・2016年5月10日、いわゆるYates Memoで著名なUS Deputy Attorney General Sally Yatesは、今後、事業会社が有罪答弁取引をまとめる際に、いわゆるcurve
inを減少させる方針であることを明言。なお、個人に対する処分が事業会社に対する処分決定に先行する事案が登場し始めている。個人処罰を重視する政策は確実に実務に反映されている。 |
罰金 |
・以下は2015年の統計を世界レベルで集計したものだが、世界全体でみても米国司法省の罰金額が突出。棒グラフの一番上が2015年上半期の金額を合計したもの。
・2015年上半期でみると、ブラジル及び欧州の制裁金額は減少傾向である。
・インド、インドネシア、南アフリカ及びカナダでも制裁金賦課決定がでていることには注意が必要。 |
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・下記の統計グラフの一番上は2016年上半期、二番目が2015年半期、一番下が2015年通年の集計。
・2015年通年では米国が突出していることが明らか。 中国も通年では10ドルを超えている。 |
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・欧州委員会による2016年の制裁金は7月19日現在で約30億ユーロとここ数年で最高額を記録。同日に発令されたトラック・カルテルにおける合計29億3000万ユーロの制裁金の影響が多い。2016年の後半にはFXトレード・カルテルで制裁金が発令されるのではないかと言われている。
・欧州委員会は、2016年12月7日、Credit Agricole、HSBC及びJPMorganに対して、金利デリバティブ商品についてカルテルがあったとして、合計4億8500万ユーロの制裁金を賦課。カルテルは2005年9月から2008年5月まで継続したとされる。カルテルの参加者は、Barclays、Credit
Agricole、HSBC、JPMorgan Chase、Deutsche Bank、RBS及びSociete Generaleである。 |
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・下記記載の通り、1969年以降の統計でもトラック・カルテルにおける合計29億3000万ユーロの制裁金は過去最大の制裁金である。カルテルの継続期間は1997年から2011年と14年に及ぶ。欧州経済領域内における中型及び大型トラックのグロス段階の価格調整、中型及び大型トラックの排ガス技術の導入時期の調整、排ガス基準を遵守するために必要な排ガス技術コストの顧客への価格転嫁についての価格協定を締結していたことが問題視された。MANはleniencyにより、12億ユーロに及ぶ制裁金を全額免除され、ボルボ/ルノーは、40%、ダイムラーは30%、Ivecoは10%の減額であり、ボルボ/ルノー、ダイムラー、Iveco及びDAFについて和解成立により追加的に10%減額がなされている。 |
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・制裁金支払いの上位10は以下の通り。2016年7月19日のトラック・カルテルのダイムラーが単体としては過去最高額である。 |
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・なお、下記は、2005年〜2015年までの間の、欧州委員会による、合計282件のカルテル摘発の内訳を被疑事業者の国別にて集計したもの。ドイツ企業が77社であり最多であるが、日本企業は50社で第2位となっている。欧州委員会での摘発であるのに、日本及び韓国が上位であることに注目すべきであろう。 |
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Nationality |
Number of Cartel Exposed |
1 |
Germany |
77 |
2 |
Japan |
50 |
3 |
France |
40 |
4 |
UK |
38 |
5 |
USA |
37 |
6 |
Italy |
27 |
7 |
Korea |
17 |
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International Cartel Observation |
【自動車部品カルテル】 |
・2016年11月15日時点で、47社及65人の個人が訴追され、合計47社及び29名の個人が有罪答弁に応じている。
・2016年11月15日時点で米国司法省が回収した罰金総額は29億ドル以上。
・東海興業及びグリーン東海は、有罪答弁取引が纏まらず、2016年6月15日、米国司法省は、正式訴追(indictment)に踏み切る。米国司法省が正式訴追に踏み切ったのはAU
Optronics事件以来。
・自動車部品カルテルについては、米国司法省では、80%以上の案件が捜査完了したといわれている。しかしながら、現在、継続中の捜査もあり、かつ、2016年11月から新規調査にも着手している。
・他方、欧州委員会については、審査継続中の案件が少なくなく、今後、制裁金賦課決定等が発令される見込み。
・ミシガン州で継続しているMutidistrict Litigationでは、2016年6月20日、日本精機、Autotiv、TRW、日立オートモーティブ、パナソニック、矢崎総業、藤倉、住友電気、Lear
Corporationについて、end payor plaintiffとの間で和解が成立。
・2016年6月、米国司法省は、西川ゴムとの間で、130億ドルの罰金の支払いに同意。関連部品はbody sealing。カルテルは米国及びカナダ両国の通商に影響を与えるものであったが、米国司法省及びCanadian
Competition Bureauの協議の上、米国のみにおいて捜査が進められ、上記の有罪答弁取引成立に至ったもの。
・Competition Commission of Indiaは2016年9月に質問状を送付し、複数の自動車部品カルテルの調査に乗り出している。 |