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独占禁止法の法律相談.com
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HOMEライセンス契約に関わる問題パテントプールの際の地域分割合意

パテントプールの形成に伴い製品の販売地域について合意をすることは、独占禁止法に違反し、排除措置命令や刑事罰の対象になる場合もあり得ます!

ライセンス契約に関わる問題
問題点とリスク

『パソコンチップの日本国内トップメーカー5社(a社〜e社)の間で、その製品の製造に関連する現在及び将来の特許等を相互にライセンスしあうことを目的としてパテント・プールを設立し、当該パテントプール設立契約において、a及びb社は、西日本の地域においては販売せず、c〜e社は東日本の地域では販売しない旨取り決めるとともに、a〜e社の出資比率を取り決めるなど、相互に販売地域等の制限を課し、プールされた特許権についてはこのような制限に従うものに対してのみライセンスする旨合意を形成した。』

上記のような行為に見覚えのある方は要注意です。

上記の行為は、場合によっては、競争が実質的に制限されており、不当な取引制限に違反しているとして、公正取引委員会から排除措置命令や刑事罰の対象になる可能性があります。

なお、刑事罰は、担当者個人について3年以下の懲役刑又は500万円以下の罰金刑、法人については5億円以下の罰金刑であり両罰規定になっています。

パテントプールはそれ自体が競争を制限する性質を有するものとして、当然に独占禁止法に違反するわけではありませんが、パテントプールに付随する合意の内容如何では、不当な取引制限に該当するとして、独占禁止法に違反する場合がでてきます。上記の例で付随的に合意されている内容は、地域分割についての合意であり、不当な取引制限の一類型であると考えられており、競争が実質的に制限される場合には、不当な取引制限に違反します。

特許権は本来企業の競争力を高めるために取得するもので、特許権の行使により独占禁止法違反となり、『独占禁止法に違反した企業』というレッテルが貼られてしまったり、場合により刑事罰が課されるようなことになれば本末転倒です。

特許権取引について独占禁止法に違反するような事態はすべからくこれを避ける必要があります。

問題点の解決方法

第1に、地域分割についての合意にもかかわらず競争が実質的に制限されていないことが証拠により裏付けられている場合を除き、このような合意を形成しない、あるいは合意を実行しないという方法が考えられます。

第2に、パテントプールを形成する場合には、いかなる場合であっても競争制限的な性質を有する付随的な合意を形成しないという方法が考えられます。

以上で示した方法を採用すると、いずれの場合でも、パテントプールのメンバー間の協調的活動が妨げられてしまいますが、本来、競争的な関係にある事業者間の協調的な活動は不当な取引制限として独占禁止法に違反することを思い起こせば、パテントプールに付随するとはいえ、パテントプールのメンバーとの協調的活動については慎重に進める必要があります。

公正取引委員会から、『独占禁止法に違反した違法な企業である』というレッテルを貼られて社会的非難に晒されたり、刑事罰が課される可能性もあるという最悪のリスクまで念頭におくと、パテントプールのメンバーとの間で競争制限的な性質を有する合意を形成する場合には、独占禁止法に違反しないような方法を取る必要があるといえます。
 
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