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HOME流通取引に関わる問題実体編委託販売と再販売価格拘束

再販売価格拘束として、排除措置命令の対象になる場合もあり得る!

流通取引に関わる問題
問題点とリスク

『日本にある医療機器メーカーA社は、販売価格を決め、Bに対して、製品の販売を委託した。契約書では、委託期間が終了したのちの返品は認めているものの、委託期間内の損傷については、過失の有無を問わずBに責任を負担させている。Bが契約の改定を依頼したところ、Aは、委託販売であれば問題ないとしてこのような依頼を拒絶した。』

上記のような行為に見覚えのあるかたは要注意です。

上記の行為は、場合によっては、再販売価格拘束あたり、不公正な取引方法に該当するとして、公正取引委員会から排除措置命令の対象になる可能性があります。また、過去にさかのぼって10年以内に再販売価格拘束で違反認定を受けている場合には課徴金納付命令の対象になります。課徴金額は、取引額の3%に違反期間(最長10年間)を掛け合わせた金額となります。

排除措置命令の対象になると、『独占禁止法に違反した違法行為に従事した企業』というレッテルが貼られることになりますし、排除措置命令が確定すると、民事損害賠償訴訟では、行為の違法性が推定されて敗訴する危険性が高まります。

さらにやっかいなのは、排除措置命令が発令された場合に、当該命令に違反してしまった場合には、刑事罰が適用されることです。刑事罰の重さは、個人については2年以下の懲役又は300万円の罰金、法人については3億円以下の罰金(両罰規定)です。

加えて、再販売価格拘束に対しては、伝統的に、公正取引委員会が厳格な執行をしてきていますので、現実の執行状況という観点からも十分な注意が必要です。リスクが現実のものとして顕在化する可能性が高い分野であるためです。

独占禁止法違反となり、『独占禁止法に違反した企業』というレッテルが貼られてしまったり、場合により刑事罰が課されるようなことになれば本末転倒です。

独占禁止法に違反するような事態はすべからくこれを避ける必要があります。

問題点の解決方法

公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(1991年7月11日付け、2017年6月16日最終改訂)によると、以下に該当する場合には、再販売価格拘束には該当しないとされています。

委託販売の場合であって、受託者は、受託商品の保管、代金回収等についての善良な管理者としての注意義務の範囲を超えて商品が滅失・毀損した場合や商品が売れ残った場合の危険負担を負うことはないなど、当該取引が委託者の危険負担と計算において行われている場合

メーカーと小売業者(又はユーザー)との間で直接価格について交渉し、納入価格が決定される取引において、卸売業者に対しその価格で当該小売業者(又はユーザー)に納入するよう指示する場合であって、当該卸売業者が物流及び代金回収の責任を負い、その履行に対する手数料分を受け取ることとなっている場合など、実質的にみて当該メーカーが販売していると認められる場合

なお、2017年6月16日の改訂で以下の具体例が追加されていることに留意すべきでしょう。

産業用部品AのメーカーであるX社が同社のユーザーであるZ社との間で産業用部品Aの販売価格を取り決め、X社の代理店であるY社に対し、当該価格でZ社に納入するよう指示すること(具体的には、Y社にZ社向け産業用部品Aの物流、代金回収及び在庫保管の責任を負ってもらうこととし、その履行に対する手数料は、Y社のZ社への納入価格とY社のX社からの購入価格との差額とする。)は、Y社は物流、代金回収及び在庫保管の責任を負うが、Y社が負う在庫管理に伴う危険負担は極めて低いと考えられることから、実質的にみてX社がZ社へ直接販売していると認められる。また、X社が指示するのはY社がZ社に納入する価格のみであり、Y社がZ社以外のユーザーに販売する際の価格や、Y社以外の代理店が販売する際の価格を指示するものではないことからX社の産業用部品Aについての価格競争に与える影響はほとんどないと考えられる。したがって独占禁止法上問題となるものではない。(平成21年度相談事例集「2 代理店の再販売価格の拘束」)

なお、上記の例では、在庫負担の危険負担を追わせても良いものの、代金回収については法的な責任を負わせるまでであり、危険負担を追わせることまでは良いとは述べていない点に留意すべきでしょう。

製品の供給業者としては小売段階の価格をコントロールしたいというインセンティブがあることは理解し得ないでもありませんが、再販売価格拘束として独占禁止法に違反し、『違法企業』のレッテルを貼られてしまっては本末転倒です。

このような事態はすべからくしてこれを避けるべきです。

なお、上記の事例の分析は、全てが日本国内で完結したことを所与の前提としています。これが、例えば、欧州連合に影響する可能性があるという前提ですと、EU競争法、具体的にはTFEU条約101条1項該当性についての分析が必要です。これにつき、基本ルールを定めているのが2022年6月1日から施行されている委員会規則2022年720号及び2022年6月30日付けのガイドラインです。

これらの基本ルールは、委員会則2010年330号の枠組みを踏襲し、最低再販売の維持行為については、ハードコアであり、目的による違法の枠組みを維持しつつ、以下のような再販売価格拘束行為については、競争促進効果を発生させることを認めるものです。

新商品を市場に投下する場合

2〜6週間の期間限定にて、低価格による商品の売り出しを実施する場合

小売業者にて、販売前の追加的なサービスの提供を認める場合

販売業者にて、赤字販売をしないようにさせる場合

また、委員会規則2022年720号では、最低宣伝価格(Minimum Advertised Price)が最低再販売価格拘束に該当し得ることも確認されているので留意が必要です。

また、委員会規則2022年720号でも、供給者と顧客間にて、直接契約が存在し、intermediary purchaserを介在させる必要がある契約形態(fulfilment agreement)については、供給者が価格を設定しても、再販売価格拘束には該当しないことを明らかにしています。但し、その場合、@intermediary purchaserはsulfilment serviceの提供のために供給者にて選任したこと、A顧客側にて選任したものではないことという要件を満たす必要があります。
 
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