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独占禁止法の法律相談.com
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HOME流通取引に関わる問題実体編補修部品の供給拒否

場合によっては、不当な取引妨害として、独占禁止法違反として、排除措置命令の対象になる場合もあり得ます!!

流通取引に関わる問題
問題点とリスク

『A社製のエレベーターを事故のビルに設置しているXがその保守点検を独立系保守業者Bに行わせていたところ、部品交換が必要になったので、Aの子会社Cに部品の注文をしたところ、Cは、保守部品の販売はしない、取り替え調整工事もあわせて発注しなければ応じないとして、保守部品の販売を事実上拒否した。』

『A社製の動く歩道を駅の構内に設置していたH市は、当該歩道のメンテナンスを、Aの子会社Pではなく、独立系保守業者Kに行わせていた。Kは点検の過程で部品交換が必要と判断したので、Pに対して部品を注文したところ、Pはなかなか部品を納入せず、3ヶ月が経過した。H市は、このままでは事故に繋がりかねないと判断し、Kとの保守契約を解除した上、Kに対して保守を依頼したところ、Pは、翌日、必要部品の交換業務を完了した。』

上記のような行為に見覚えのあるかたは要注意です。

上記の行為は、場合によっては、不公正な取引方法に該当するとして、公正取引委員会から排除措置命令の対象になる可能性があります。

独占禁止法違反となり、排除措置命令の対象になると、『独占禁止法に違反した違法行為に従事した企業』というレッテルが貼られることになりますし、排除措置命令が確定すると、民事損害賠償訴訟では、行為の違法性が推定されて敗訴する危険性が高まります。

さらにやっかいなのは、排除措置命令が発令された場合に、当該命令に違反してしまった場合には、刑事罰が適用されることです。刑事罰の重さは、個人については2年以下の懲役又は300万円の罰金、法人については3億円以下の罰金(両罰規定)です。

歩く歩道やエスカレーター、エレベーターでは、保守業務を確保することが営業上重要なポイントであることは理解できますが、保守業務もあわせて獲得しようとするあまり、不当な取引妨害と判断されて独占禁止法違反となり、『独占禁止法に違反した企業』というレッテルが貼られてしまったり、場合により刑事罰が課されるようなことになれば本末転倒です。

独占禁止法に違反するような事態はすべからくこれを避ける必要があります。

問題点の解決方法

問題点を回避するためには、保守部品の供給を拒否しても、不当な取引妨害にならない場合を除いて、保守部品の注文に応ずるというものです。保守部品の注文に応じない理由が合理的として認められる場合には、以下のようなものがあります。
@そもそも、在庫がないなどの理由がなく、注文に応ずることが出来ない。
A自社が注文を拒否しても、他の業者から入手可能。

いずれにしても、保守業務を獲得しようとするあまり、足元をすくわれ、『違法企業』というレッテルが付いてしまっては一流企業への道は、遠くなるばかりです。

このような事態はすべからくしてこれを避けるべきです。

参考事例
東芝エレベーター株式会社(以下「東芝エレベーター」といいます。)が独立系保守メーカーからの保守部品の販売申入れに対して迅速な対応をしなかったことに対して、大阪高等裁判所は、平成5年7月30日、東芝エレベーターの行為が不公正な取引方法第15項に該当する不当な取引妨害に該当し、独占禁止法第19条で禁止される違法行為であるとして、東芝エレベーターに対して不法行為に基づく損害賠償義務があることを認定しています(大阪高判平成5年7月30日判タ833号62頁)。また、三菱ビルテクノ株式会社(以下「三菱ビルテクノ」といいます。)が独立系保守業者に対して三菱電機製昇降機の保守部品を販売するに際して納期を遅らせたり、自社の保守契約顧客向けの販売額よりも高価で販売していた行為に対して、公正取引委員会は、平成14年7月26日、三菱ビルテクノの行為が不公正な取引方法第15項に該当する不当な取引妨害に該当し、独占禁止法第19条で禁止される違法行為であると判断しています(公取委平成14年(勧)第7号)。
 
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