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場合により、問題が発生する場合もあり得ます!
流通取引に関わる問題 |
わが国の携帯電話市場は、年々、拡大傾向にありますが、ここ数年は契約数の増加傾向が鈍化する等、市場が飽和状態に近づいています。このため、携帯電話事業者は利用者の獲得競争に加え、料金の低廉化やサービスの多様化などを図っていますが、番号ポータビリティ制度は、携帯電話事業者間の競争を一層促進すると考えられています。
他方で、電気通信事業者の自主的な取組みによる番号ポータビリティの導入に当たっては、@運用のルール、費用の回収方法、接続料金の精算方法等、その具体的な実現方法について電気通信事業者間で協議や取り決めを行う必要があり、その際、共同行為を通して競争を制限する場合や、Aその導入後において、既存の電気通信事業者が、特定の電気通信事業者や新規参入を行う電気通信事業者等を不利に取り扱う場合には、独占禁止法上の問題を発生させることになります。
米国ではこのような問題は合理の原則で判断することとなると思われます。ガイドライン(The Federal Trade Commission and the U.S. Department of Justice, Antitrust Guidelines for Collaborations Among Competitors)によると、合理の原則の判断手法は以下のようなものです。
「常にあるいはほとんど常に価格を上昇させ、あるいは供給量を減少させることになる類型の合意は、当然に違法(Per Se Illegal)である。当然に違法(Per
Se Illegal)となる類型の合意は、競争業者間の価格や数量を固定し、入札談合し、顧客、供給者、地域または通商を割り当てることで市場を共有または分割することに関する合意を含む。裁判所は、そのような合意が認定された場合には、主張されているビジネス上の目的や競争阻害的被害、競争促進的利益、および全体的な競争法的効果についての判断を加えることなく断固として違法と判断する。司法省は、典型的なカルテルのみを、刑事訴追する。しかしながら、効率性を高める経済的統合に参加しているものが、統合に合理的な範囲で関係しており、かつ競争促進的効果を達成するために合理的に必要な合意を締結する場合には、たとえその合意が競争促進的効果を発生させなければ当然違法の原則が適用される類型の合意であったとしても、競争当局は、合理の原則の下で分析をする。(略)問題となる統合は、§3.36で紹介されている効率性分析の方法により、審理可能な競争促進的効果を発生させることがもっともなものでなければならない。そのような競争促進的効果は、参加者の競争に向けた能力と動機を高めることになるのであり、したがって、合意が有する競争阻害的性質を相殺し得るものである。(略)合意は、本質的ではなく、合理的に必要であることである。しかしながら、仮に参加者が、実務的でかつ顕著により制限的でない方法により、等しいか、あるいは匹敵する効率促進的統合を達成できる場合には、当局は、その合意は合理的に必要であるとはいえないと結論付ける。この精査をするにあたって、通常でない状況を別とすれば、当局は、実務的に、顕著により制限的ではない方法が、合意が締結された時点において利用することができたか否かを検討するが、ビジネスの現実を前提にすれば実際的ではない理論的により制限的ではない選択肢を探すことはしない。合意が、経済的活動の統合による競争促進的効果を達成するために合理的に必要であるという主張を認容する前に、当局は、主張を評価するために、制限的な事実調査をする。そのような事実調査は合意による効率性が理論的には可能でも特定の共同との関係では実現しそうもないことを明らかにするかもしれない。競争そのものが非合理的であるという考え方を前提とした主張などは、無論、不十分である。また、その他の主張の中には、一見してありそうもないものもあるかもしれない。いずれにしても、合意を“合弁”とラベリングすることだけでは、価格を上昇させ、供給を制限する合意を保護することにはならない。行動の意図ではなく性質こそが決定的なのである。」
「当然違法の原則に基づく訴追がされない合意については、合理の原則により、その全体的な競争法的効果を決する。合理の原則による分析は、当該合意が存在しない場合と比較した競争の状況に着目する。中心的な質問は、当該合意が存在しなければ達成されたであろう水準以下に供給量、質、サービス、技術革新を減らしたり、そのような水準以上に価格を上げたりする能力や動機を増加させることで、当該合意が競争を阻害するかどうかである。合理の原則による分析は、柔軟な調査を可能にし、合意の性質と市場の状況によって、着目点も詳細さも異なる。当局は、これらの要素に着目し、当該合意の全体的な効果を適切に決めるために必要な程度で事実調査を行う。通常は、分析において、処分を決定付ける要因は、1つもない。合理の原則の下では、当局の分析は、合意の性質に対する精査からはじまる。これは、合意の性質は、おそらく関心を集めることになる競争阻害的な効果の類型を決するものであるからである。精査の一部として、当局は、合意のビジネス上の目的を尋ねた上、仮に既に合意が実行に移されている場合には、合意により競争阻害的効果がもたらされたか否かを検討する。仮に、合意の性質と市場支配力の不存在がともにあいまって競争阻害的効果の不発生を示すときは、当局は、合意に対する訴追をしない。例8を見よ。代わりに、合意の性質から競争阻害的効果が発生することが明らかな場合であったり、実際に実行段階にある合意により、競争阻害的効果が発生している場合には、競争阻害的効果を上回る競争促進的効果がないのであれば、当局は、詳細な市場分析をすることなく、そのような合意を訴追する。仮に、合意の性質に対する当初の精査が競争法的問題を示唆するが、当該合意、詳細な市場分析なしに訴追される類の合意ではない場合、当局は、当該合意をより深く検討する。当局は、典型的には、合意が市場支配力を形成し、または増加させ、または市場支配力の行使を促進し、それゆえ競争に対してリスクをもたらすかどうかを判定するための最初の段階として、関連市場を確定し、市場占有率と市場の集中度を計算する。当局は、参加者と協力者が、独立して競争する能力と動機を有していることに関連する要素、たとえば、合意が排他的契約か、非排他的契約かどうかや、合意の継続期間といった要素について精査を加える。さらに、当局は、競争阻害的効果を阻止または相殺する市場参加が、タイムリーに、蓋然性をもって、十分に行われるかどうかを検討する。加えて、当局は、競争阻害的効果を助長しまたは妨げるいかなる要素についても精査を加える。仮に、このような要素の精査によって、競争阻害的効果が発生する可能性がないことが明らかである場合には、当局は、競争促進的効果を考慮することなく精査を終了する。仮に調査により競争阻害的効果が示唆される場合には、当局は、関連する合意が、競争阻害的効果を相殺し得る競争促進的効果を達成するために、合理的に必要であるか否かを検討する。」
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