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特許権者が、複数のライセンシーに対して特許権をライセンスするに際して、特許製品等の販売価格、販売数量、販売先、販売地域などについて制限を課することは不当な取引制限として刑事罰や排除措置命令の対象になる場合があり得ます!
| ライセンス契約に関わる問題 |
問題点とリスク
『瞬間接着剤の製造について特許技術を有しているA社は、自社の特許技術を使用許諾するに際して、特許製品の販売地域について、B社は北海道のみとし、C社は九州のみとし、D社は四国のみとした上、販売価格については、A社の製品から10パーセントの範囲内にすることを申し合わせた。』
上記のような行為に見覚えのあるかたは要注意です。
上記の行為は、場合によっては、不当な取引制限に違反しているとして、公正取引委員会から排除措置命令や刑事罰の対象になる可能性があります。
なお、刑事罰は、担当者個人について3年以下の懲役刑又は500万円以下の罰金刑、法人については5億円以下の罰金刑であり両罰規定になっています。
特許権については排他権が認められており、特許権の行使と認められる範囲では独占禁止法違反は発生しませんが、特許権を行使していることを口実に競争を制限しようとするような場合には、独占禁止法違反が問題になってきてしまいます。
特許権は本来企業の競争力を高めるために取得するもので、特許権の行使により独占禁止法違反となり、『独占禁止法に違反した企業』というレッテルが貼られてしまったり、場合により刑事罰が課されるようなことになれば本末転倒です。
特許権取引について独占禁止法に違反するような事態はすべからくこれを避ける必要があります。
問題点の解決方法
特許権を非独占的に使用許諾すること自体は必ずしも独占禁止法上の問題を発生させるものではありませんが、使用許諾に際して不当な取引制限についての取決めをすれば、当然、独占禁止法違反になってしまいます。
このような事態を避けるためには、第1に、特許権の使用許諾に際して、不当な取引制限に該当し得るような付随的な合意を形成しないことです。上記の例のような価格協定や市場分割協定は不当な取引制限に該当する典型例ですから、このような合意を形成した場合には、原則として、一定の取引分野における競争が実質的に制限されるとして独占禁止法違反が成立するという認識を有する必要があるといえます。
第2に、仔細な市場分析に基づいて、不当な取引制限に該当し得るような合意を形成してこれを実行に移したとしても、一定の取引分野における競争が実質的に制限されないことが証拠により裏付けられている場合を除いて、このような合意を形成しないことです。しかし、市場画定や市場占有率は流動的である上、公正取引委員会と同様の分析手法で市場画定をするのは必ずしも容易な作業ではありませんから、第2の方法は理論上の方法であって、実際的な方法とはいえません。
なお、公正取引委員会のガイドラインによると、ライセンサーがライセンシーに対し、技術を利用して製造を行うことができる地域を限定する行為は、原則として不公正な取引方法に該当しないとされています。
他方で、これが欧州市場を対象としている場合には、適用されるルールが異なります。具体的には委員会規則2014年316号が適用されます。この場合、ライセンサーとライセンシーが競争事業者関係にある場合、地域制限は市場分割に該当するものとして、競争事業者関係にない場合には、消極販売に限定して(積極的販売制限は30%の一括適用免除規則の対象)、原則としてハードコア制限に該当します。欧州委員会は、販売数量制限そのものについて、消極的販売制限と同義とは理解しないものの、消極的販売の間接的制限になると解釈しています。@特定地域の需要に対応するように販売数量を適宜調整する、A特定地域への最小販売義務及び数量制限の組み合わせ、B特定地域の販売と最小実施許諾料の支払いとの組み合わせ、C販売地域により異なる実施許諾料の設定及び販売先の地域の監視の組み合わせは、間接的な消極販売制限であり、ハードコア制限であることを、欧州委員会は明言しています。
しかし、競争事業者関係にある場合でかつ非相互的契約関係の場合に、ライセンシーに対して積極及び消極的販売制限を課することは例外として許容されます。また、両者が競争事業者関係にない場合に、ライセンシーに対して、ライセンサーの排他的販売地域又は顧客に対する消極的販売制限は例外として許容されます。
米国の場合には、実施分野・数量・期間・地域の制限は合理の原則で判断することとされていて、多くの場合、合法となるのですが、国際的特許実施許諾契約に関して、市場分割をカルテルを疑われることもあるので、注意を要するといえよう。United
States v WestingHouse Electric Corp., 471 F.Supp. 532 (N.D. Cal. 1978)が典型例です。この件では、三菱電機、三菱重工及びウエスチングハウスの三社が、電気関係の日本特許、米国特許、及びノウハウを互いに実施許諾し合い、これを通じて日米の地域市場を分割したとして、米国司法省が、三社を提訴したものです。この案件は長い歴史を有する案件ですが、1951年に、WH、三菱電機間に技術援助契約が締結され、1952年にWHと三菱重工の前身の会社にて同様の技術援助契約が締結されたものです。この契約は二つの側面があり、まず、WHが三菱電機と三菱重工に、その有する特許のライセンスをアメリカ外の地において供与し、このライセンスによって三菱電機と三菱重工は、アメリカが命においてライセンスの対象となっている技術を利用した製品の販売が可能であり、他方で、密日電気と三菱重工は、WHに対して、日本国外の地においてその有する特許をライセンスし、WHはそのライセンスにより日本以外の地においてライセンスの対象となる技術を利用した製品の販売が可能というものです。司法省は、これは国際市場分割で、三菱電機と三菱重工が製品をアメリカで販売しなかったのはカルテルが理由としたのですが、被告側は、販売により、WHの特許侵害が生じることを懸念したためであると主張しました。裁判所は、被告の主張を認め、司法省の主張を退けました。
参考例
A地方公共団体の調達に係る公共下水道用鉄蓋について、X社の実用新案を取り入れた仕様が当該実用新案を他の事業者にもライセンスすることを条件に採用され、X社のほかの6事業者に対する非独占的なライセンス契約に関連して、当該地方公共団体に提出する当該鉄蓋の見積価格はX社の見積価格を最低見積価格とすること、7社の工事事業者渡し価格及び工事業者マージン率を決定したこと、及びX社の販売数量比率を20パーセントとし、残りをX社及び6社で均等配分することとした。
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