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価格に差異があること、即ち、差別的対価設定ではありません!
| 流通取引に関わる問題 |
差別的対価として公共阻害性が認められる典型的な場合は、自己の競争者の事業活動を困難にさせる恐れがある場合、取引の相手方を競争上著しく有利又は不利にさせるおそれがある場合、競争者の商品の取り扱い制限、廉売の防止等独占禁止法上位法又は不当な目的を達成するために用いられる場合等です。
この点で有名なのがLPガス事件です(東京地判平成16年3月31日判例時報1855号78頁)。同事件において、大手販売業者である被告は、静岡県で10立方メートルあたり5700円から6200円の価格帯で販売しているLPガスを関東地域(東京、神奈川、埼玉及び千葉)において新規顧客に対して4300円(既存の顧客に対しては6000円前後)で販売していました。上記の大手販売事業者による関東地域におけるLPガス販売が地域及び相手方による不当な差別対価にあたるとして24条に基づく差止請求がなされたのが本件です。大手販売事業者の販売価格が原価割れでないことについては、当事者に争いがありませんでした。裁判所は、販売価格の差は、市場の競争状況及び供給コストの違いを反映するものと推認することができ、本件価格差は、本来非効率的な業者が自らと同程度に効率的な業者を排除するために能力を超えた価格設定をしているとは認められないとして請求を棄却しました。
なお、米国にて価格差別を規制するのはロビンソン・パットマン法です。ロビンソン・パットマン法の制定には、当時のアメリカの社会的背景が強く関係しています。第1次世界大戦を経て、1920年代のアメリカ経済は繁栄を謳歌しましたが、1929年に発生した大恐慌を経て、フランクリン・ルーズベルト大統領政権下で実施されたニューディール政策では、公共事業の推進や労働者の保護などが協力に実施されました。その結果、立法面では、全国産業復興法が制定されたのです。全国産業復興法は、不況カルテルの認容をその特徴としていた法律であり、消費者の犠牲の下に国の産業を保護しようという側面を有する法律でした。全国産業復興法は、1935年に連邦最高裁判所により違憲と判断され、立法による消費者被害の拡大は防がれたのですが、ニューディール政策は、大規模スーパーマーケット等の出現による市場集中と小規模独立商人の市場からの撤退をもたらしていました。そのような状況を改善し、市場の集中度を低下させ、小規模独立商人を保護するために制定されたのが、ロビンソン・パットマン法であり、差別対価の対価の設定を禁止しています。但し、近年では、あまり執行されておらず、廃止が検討されていましたが、2020年以降の競争政策の転換もあり、2024年以降は積極適用が検討されています。米国司法省は1977年以降管轄を放棄しているので、執行管轄権はFTCに事実上専属する状態となっています。
ロビンソン・パットマン法は、クレイトン法2条(15 U.S.C.§13)では対処しきれなかった価格差別を実行させにくくするために制定された法律であり、法文上は、クレイトン法2条を構成しています。同法は、(a)から(f)までの六項から構成されており、その中でも、(a)は最もよく発動される条項であり、通商に従事するものが、複数の買手に対して、価格差別を行う場合には、違法である旨規定しています。(b)は価格差別についての一応確からしい証拠が提出され、疎明が完成した場合(Prima
Facie Case)には、被告は反証の責任を負担するとし、安値サービスに対抗するため、善意で、同様の安値サービスを提供したことを示して反証することを認めているものです。(c)は、売手間および買手間の手数料、仲介料、その他代償の授受を禁止し、(d)および(e)は、売手に対して、当該顧客と競争関係にある他の買手に対しても、同様の便宜が供されない限り、商品の取扱い、販売の促進または広告の提供、そのための費用を負担することを禁止するものです。連邦取引委員会は、(d)および(e)の規制は絶対的なものであり、競争に与える被害が立証される必要もなく、原価の裏付けによる防衛も認めないとしています。さらに(f)は、買手が、ロビンソン・パットマン法違反であることを知りつつ、差別的な価格を設定された商品を購入することを禁止しています。
ロビンソン・パットマン法上の抗弁とはどのように構成させるのかを述べた事例として重要なのがUnited States v. Boden, 370
US 460 (1962)です。シカゴの乳製品業者ボーデンとポーマンは、コストを検討した上で、大手チェーン店と独立系の販売店を分けて製品を販売していました。この場合、A&Pなどの大手チェーンには取引数量に関しない均一の低価格で販売し、独立系の販売業者は取引数量に応じた値引き価格で販売していたのですが、独立系に対する最高値引き価格でも、大手に対する均一価格の方が有利という価格設定でした。当局は、クレイトン2条違反を主張して訴追しましたが、ボーデンは大手に対する平均コストの相違に根拠をおいているとして正当化を主張しました。連邦最高裁は、ボーデン等の示す正当化根拠は、コスト差の許容値を言うのみであり、抗弁の立証としては不十分であるとし、この価格付けは、恣意的なグループ分けによるもので独立系への価格付けは不正確である、大手チェーンとの出荷価格との比較においても正確なコスト計算によって適切な執行がなされるべきであるとして、当局の主張を認め、正当化主張を認めませんでした。
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