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場合により、不当な取引制限として独占禁止法に違反し、課徴金や排除措置命令、はてには刑事罰の対象になる可能性がある!
| 流通取引に関わる問題 |
回答の概要
競争業者と競争条件に関わる情報を交換することは、場合によっては、不当な取引制限に該当し、公正取引委員会から排除措置命令、場合によっては、刑事罰の対象になる可能性があります。電話、手紙、直接の会合のみならず、電子メールなどのインターネットを使った情報交換も含まれます。
競争業者間の単なる情報交換であっても、それによって他社との間で「暗黙の了解」または「共通の意思」が形成される認定される可能性もあるので、十分注意が必要です。
なお、刑事罰は、担当者個人について3年以下の懲役刑又は500万円以下の罰金刑、法人については5億円以下の罰金刑であり両罰規定になっています。課徴金納付命令は、令和元年独占禁止法改正により、金額が高額化し、算定率は10%ままですが、算定期間が最長10年間になっています。
また、排除措置命令の対象になると、『独占禁止法に違反した違法行為に従事した企業』というレッテルが貼られることになりますし、排除措置命令が確定すると、民事損害賠償訴訟では、行為の違法性が推定されて敗訴する危険性が高まります。
『独占禁止法に違反した企業』というレッテルが貼られてしまったり、業務停止命令の対象になったり、民事損害賠償の対象になるような事態はすべからく避ける必要があります。
上記のようなリスクは、いずれも、すべからくして回避する必要があります。
問題点の解決方法
問題点を回避するためには、価格や出荷量という競争条件に関わる事項ついては、競争業者と一切情報交換せず、仮に情報交換するとしても過去の情報のみにするなど、競争への影響が小さいものに限定する必要があります。また、実際の価格や出荷量については、自主的な判断により決定したことを証拠により裏付ける必要があります。情報交換の必要があるという局面はビジネスでは当然あるでしょうが、『違法企業』のレッテルを貼られてしまっては元も子もないですから、不当な取引制限に違反したと疑われないよう心がける必要があるといえます。
補足
なお、難しい問題としては、競争事業者と縦型の関係が成立するような場合、とりわけ、製品を自分でも販売するものの、代理店を通じても販売をする場合の代理店との関わりです。欧州ではdual
distributionと呼ばれ、委員会規則2022年720号や2022年6月30日付けガイドラインでも規律されています。それによると、競争関係が成立する製品販売市場における将来価格、顧客情報(但し、顧客の要望を満たすために必要な情報、販売前後のサービス情報、保証、ロイヤリティの枠組み、選択的販売性の遵守状況を管理するための情報は認められる)、代理店独自のブランド情報については共有が禁止されるとされています。TFEU条約101条1項違反になる可能性があります。
また、欧州委員会は、2023年6月1日、水平的協調ガイドラインの改正を公表している。そこでは、2011年1月14日付けにて解説されている競争事業者間の情報交換についてのガイダンスの一部が改正されている。まず、「目的による違法」の対象になり得る競争機微情報は以下を言うものとして例示されています。 ・ 価格設定(又はその意図)に関する情報
・ 現在及び将来の生産能力に関する情報
・ 商業上の戦略に関する情報
・ 現在及び将来の需要への対応状況に関する情報
・ 将来の販売に関する情報
・ 現在の状況及び事業戦略に関する情報
・ 需要者にとって関連性のある将来の製品特性に関する情報
・ 金融商品のオークション市場のポジションや戦略に関する情報
また、いわゆる抽象加工について、「情報の機微性は競争事業者にとっての有用性による」との一般論を述べつつも、「状況によっては集約・加工等されて有用な意味を与えられた情報よりも生データ・情報の交換の方が機微性は低いとされる場合もある」、「個々の事業者の情報を認識することが困難なほど加工された情報の交換は競争制限に至る可能性はかなり低いと考えられる」と言及されています。
さらに、競争機微情報の一方的送信については、以下のような解説が追記されました。つまり、「ある事業者が競争機微情報をその競争者に対して開示し、その事業者がその内容を理解し受け入れた場合、状況次第では、違法な協調的行動(concerted
practice)に該当する可能性がある。」という一般論を述べた上で、主に以下のような説明を追記しました。
・ ある事業者からその競争者に向けた競争機微情報の一方的な発信・開示が「協調的行動」に該当して違法となるか否かに関しては競争者の認容の程度などが問題になるところ、例えば、担当者個人のメールボックスに向けてあるメールが送信された事実のみをもって、受信者が当該メッセージの内容を把握していたはずであることを示すものではない。受信者は、当該メッセージの内容を把握していたとの推定に対する反証の機会を有する。
・ 例えば、ある事業者が自社のウェブサイト等において今後の自社の価格方針などの情報を公知にする場合、このように一定の情報・データを発信して公知な状態に置くことは、需要者が十分な情報に基づきその公表をしている競争者の商品・サービスを選択したり、それと比較して他の競争者の商品・サービスを最終的に選択したりすることを助けるという意味での効率性をもたらしうる。もっとも、それに拘束されずに行動する場合には、そのような情報の公表は需要者にとって有用とはいえないため、そのような効率性が発現する可能性は低い。
・ 価格設定に関する将来の意図に言及する一方的な公表をしたからといって、需要者との関係でそうした公表をした事業者とそのとおりの価格設定をする契約が自動的に成立するわけではなく、その事業者を拘束するものではないものの、当該事業者の市場戦略に関する重要なシグナルを当該事業者の競争事業者に与えうるものである。したがって、そのような公表行為は、需要者の便益となる効率性をもたらさず、むしろ競争事業者間の(明示または暗黙の)共謀を助長する可能性がある。
・ また、一方的な公表は、(その背後にある)反競争的な合意や協調的行動の存在を示唆する場合もある。競争事業者が僅かしか存在せず参入障壁が高い市場において、需要者に明らかな便益をもたらさない情報(例えば、研究開発コストや環境規制適応に係るコストに関する情報など)を継続的に公表する事業者は、他にもっともらしい説明がない限り、そうした公表行為自体が欧州機能条約101条1項に反して違法となる可能性がある。さらに、一方的な公表行為は、共謀の実施又は監視のために用いられる可能性がある(もっとも、違反行為が実際に認定されるか否かは証拠関係次第である。)。
加えて、かかる第三者を介した情報交換の適法性につき、(i)特に情報を提供した事業者・受領した(競争)事業者・第三者における当該情報交換に対する認容の度合いなどに照らしてケースバイケースの判断が必要となること、(ii)当該事案における状況次第ではあるものの、競争事業者のみならず、情報を媒介した第三者等も違反行為者となる可能性がある旨、追記されました。
補足2
「機微情報の情報交換はリスクがある」という命題を耳にすることはあります。この命題自体は誤ってはいないけど、企業法務の現場ではまるで無意味な命題ですね。リスクがあるとして、どの程度リスクがあるのか不明だし、「機微情報」というのは概念が広すぎですね。ビジネスの現場にいる方々も、このような助言を受けて何の助けにもならないし、感謝をされることもない。
その意味では、基礎をしっかり踏まえることが重要で、反トラスト法で、情報交換がどのように扱われているのかも、基礎の1です。
反トラスト法の基礎判例は、1925年のMaple Floooring事件で、同事件では、競争機微情報の情報交換は、合理の原則で判断するのが相当であるとし、同業者間で、過去の価格情報を配布しあっているのみでは、カルテルを認定するのは不十分であるとしました。
もう一つの重要判例は、1969年のContainer事件(United States v Container Corp. of America393
U.S. 333 (1969))です。同事件では、段ボールの製造・販売業者が行った価格についての情報交換がカルテルを推認させ違法となるかどうかが争われました。本件では被告企業は競争者が顧客に提示している価格を顧客や自らの記録で記録・分析で割り出せない場合、競争者から直接価格を提示しあうという慣行が存在しました。地裁は、Maple
Flooring事件を前提としつつ、価格情報の交換だけでは違法とはいえないと判断し、製品の価格は、コスト上昇にもかかわらず下降基調にあり、買い手が価格を理由として購入先を変更したといった事情があることを指摘しました。他方で、連邦最高裁判所は、
・本件市場が寡占市場であること(上位18社で90%を占める)
・製品は品質面に差異がない素材産業に関連していること
・生産能力が需要を上回る供給過剰の状態にあること
・供給過剰による価格下落に悩まされていること
・価格が下落基調であることはカルテルが存在しない証拠にはならないこと
を指摘し、市場の寡占的性質を重視して、情報交換からカルテルの存在を認定することができると判断しました。
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