企業間の協定とは何か

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欧州競争法におけるカルテル規制を分析する上で、スタート地点は、常に、何が、違法な「協定」に該当するかで、これはシャーマン法第1条、あるいは独占禁止法第3条後段に基づきカルテル規制への該当性を分析する態度と基本的に異なることがありません。

初期にはEC条約第81条第1項上の協定とは私法上の契約を意味するという見解も見られましたが、70年代以降、私法上の契約である必要はなく、当事者の一方が意図的に他方の行動の自由を制限することで足りると判断されるようになりました。欧州第一審裁判所は、判例により、81条第1項の協定の定義は、少なくとも2当事者の意思の一致をいい、意思表現方法は重要ではないという解釈を示しています。例えば、市場である行動をとったり、そのような行動をとる意思を示したり、暗黙に承認するという単なる事実が市場での共通行動をとる企業間の協定締結と考えられるのです。このような、いわゆる、暗黙の協定が協定に該当し、81条第1項に該当するという結論には十二分に注意する必要があります。81条第1項でいう協定は、必ずしも国内法でいうところの協定や、法的に拘束力を持つものである必要はありません。裁判所と欧州委員会は、紳士協定であっても81条第1項の協定に該当するのに十分であると考えています。同様に、プロトコールも当事者間の同意を示すものとして協定と考えられます。協定が署名される必要もなく当事者の意思表現は口頭でも足ります。

第一審裁判所は、効力をもはや持たない協定でも、表向きの契約終了にも拘らず、その効力が常に継続していることで、81条第1項が適用されると述べています。また、シャーマン法第1条および独占禁止法第3条後段と同様ですが、EC条約第81条第1項も、水平的協定のみならず垂直的協定がその規制対象に含まれます。

Authored by Dr. Inoue

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このページは、Dr. Inoueが2007年12月16日 21:56に書いたブログ記事です。

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Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。