審査手続開始

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欧州委員会が、競争を制限すると思われる協定や慣行の存在を発見する方法は様々です。欧州委員会自身の審査手続を通じて発見される場合もあれば、不服申立てを受理した結果によることもあります。

欧州委員会の競争政策年報によると、欧州委員会によって受理される不服申立ての数は、減少の傾向にあります。不服申立ては、以前は、小企業が大企業からの侵害からの保護を求めてなされることが多かったといえますが、近年は、大企業も、ライバル企業に対する戦略の一環として、不服申立てをしています。法人、自然人、加盟国は、正当な利益を証明すれば不服申立てができます。欧州委員会は、欧州委員会告示に対応する特別の書式を発表しています。欧州委員会は全ての不服申立てを検討しなければなりません。欧州委員会が、不服申立てに理由があると認めると、不服申立人は手続に参加することを求められます。欧州委員会は、異議告知書を申立人に送り、申立人は書面により意見を述べることができるだけでなく、手続に参加することもできます。しかし、欧州委員会が不服申立てに理由がないと考えた場合には、その理由を不服申立人に明らかにし、書面により意見を述べることができるように期日を設定します。

欧州委員会は、直ちに不服申立てを却下する代わりに、手続を開始し、申立人の主張を退ける最終決定を採択することもできますが、申立人は、これに対して、欧州第一審裁判所に訴えることができます。

欧州委員会は、全ての不服申立てについて、手続を開始する必要はありませんが、競争法の重点、国内レベルの解決手段の存在、違反を証明することの困難などを考慮して、優先順位を設けることができます。欧州委員会が誤った事実に基づいて決定を出したとしても、法的な間違いや明らかな評価についての誤りのみが問題になります。

Authored by Dr. Inoue

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このページは、Dr. Inoueが2007年12月14日 22:56に書いたブログ記事です。

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Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。