過度に高い価格設定

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EU競争法において、過度に高い価格設定は、EC条約第82条違反になりえます。欧州委員会は、これまで、(1)市場における強力な地位を利用するために、企業によって設定された過度の価格、又は(2)輸入制限方法として使用される過度の価格設定が、82条に違反することを認めています。

市場における支配的地位の濫用行為としての過度の価格設定に該当すると判断された事案数は多くありません。ユナイテッド・ブランド事件では、欧州委員会は、ユナイテッド・ブランド社が、地理的市場において、差別的慣行を行ったというだけでなく、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、デンマーク、ドイツにおいてチキータバナナの販売において過度な価格設定を行ったとしました。しかし、欧州委員会の決定は欧州裁判所により無効とされました。欧州委員会の主張は、ユナイテッド・ブランド社が、アイルランドで課した価格で損失を被ったにも拘らず、非常に大きな利益を上げたことを証明しえいないと判断したのです。裁判所は、経済的価値に合理的に関連して過度と思われる価格設定は濫用になり、この過度の行為は客観的に判断されるべきであると述べています。

他方、欧州委員会は、輸入浅間方法として使用される過度の価格設定行為について、支配的地位にある企業による価格設定が消費者に対する圧力ではなく並行輸入を妨げるものであったとしても82条は適用されると判断しています。ジェネラル・モーター事件はその典型例です。

Authored by Dr. Inoue

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このページは、Dr. Inoueが2007年12月24日 05:08に書いたブログ記事です。

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Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。