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2009年3月11日、欧州委員会は、EC条約82条違反の嫌疑で、フランスのEDFに対する立入調査を実施しましたね。欧州委員会は、EDFが、支配的地位を濫用して、フランスにおける電力卸売市場において料金を釣り上げた疑いがあると考えているようです。欧州委員会は、2007年1月に、電力市場における産業調査を完了しており、当該調査の過程で電力市場における競争法的問題点及び執行の可能性に対して分析を深めることができたものと推測されるところです。Reported by Dr. Inoue

2007年9月に、欧州第一裁判所の裁判官を退任したBo Vesterdorf判事が、昨年9月に出されたマイクロ事件ソフト事件の判決(同社に対して4億9700万ユーロの制裁金を支払うことを命ずる欧州委員会の決定を支持する判決)により技術革新が妨げられるようなことがあれば、それは残念なことであると認識していると報道されましたね。欧州委員会は、マイクロソフト社に対して、市場における支配的地位を濫用していることを理由に、制裁金を賦課するという判断をしました。ウィンドーズをメディアプレーヤーに同期させるための技術情報を提供するに際して、不当に高い技術料を請求しているというのがその理由でした。過度の請求がどの程度の請求を言うのかについて、これまで、欧州委員会も欧州第一裁判所も、クリスタルクリアーな基準を定立しているわけではなく、これはマイクロソフト事件でも解決されなかったといえます。なお、ユナイテッド・ブランド事件では、欧州委員会は、チキータバナナについて過度の価格設定が行われたと判断しましたが、当該決定は裁判所により否定されました。裁判所は、利益を挙げたことが証明できていないと述べています。また、同事件の裁判所の決定では、価格設定の問題よりも、経済的価値に合理的に関連しているかどうかという点が、過度の価格設定性を判断する上でよりフォーカスされました。

Reported by Dr. Inoue

EU競争法において、過度に高い価格設定は、EC条約第82条違反になりえます。欧州委員会は、これまで、(1)市場における強力な地位を利用するために、企業によって設定された過度の価格、又は(2)輸入制限方法として使用される過度の価格設定が、82条に違反することを認めています。

市場における支配的地位の濫用行為としての過度の価格設定に該当すると判断された事案数は多くありません。ユナイテッド・ブランド事件では、欧州委員会は、ユナイテッド・ブランド社が、地理的市場において、差別的慣行を行ったというだけでなく、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、デンマーク、ドイツにおいてチキータバナナの販売において過度な価格設定を行ったとしました。しかし、欧州委員会の決定は欧州裁判所により無効とされました。欧州委員会の主張は、ユナイテッド・ブランド社が、アイルランドで課した価格で損失を被ったにも拘らず、非常に大きな利益を上げたことを証明しえいないと判断したのです。裁判所は、経済的価値に合理的に関連して過度と思われる価格設定は濫用になり、この過度の行為は客観的に判断されるべきであると述べています。

他方、欧州委員会は、輸入浅間方法として使用される過度の価格設定行為について、支配的地位にある企業による価格設定が消費者に対する圧力ではなく並行輸入を妨げるものであったとしても82条は適用されると判断しています。ジェネラル・モーター事件はその典型例です。

Authored by Dr. Inoue

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