送油ホース国際カルテル

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公正取引委員会は、送油ホース国際カルテルに関与していた海外のカルテル参加者に対して、排除措置命令を発令する方針を固めました。公正取引委員会が海外の当事者に対して排除措置命令を発令するのは初めてです。

以下、12月7日付けの日本経済新聞夕刊からの抜粋です。

『海上での石油輸送に使われるマリンホースを巡り国際カルテルを結んでいたとして、公正取引委員会は7日、ブリヂストンと英仏伊のメーカー計5社に独占禁止法違反(不当な取引制限)で排除措置命令を出す方針を固めました。国際カルテルで日本企業が欧米独禁当局から巨額の制裁金を科されるケースが相次ぐ中、公取委が外国企業を行政処分するのは初めて。関係者によると、公取委が国内で使われる製品でカルテルを認定したのはブリヂストン、横浜ゴムの国内2社と、ダンロップ・オイル・アンド・マリーン(英)、トレルボルグ・インダストリー(仏)、パーカーITR、マヌーリ・ラバー・インダストリーズ(いずれも伊)の計6社。違反を自主申告したとみられる横浜ゴムの処分は見送られ、受注実績のあったブリヂストンのみ課徴金が科される見通し。6社は自国で使われる製品は現地企業が独占受注することなどを取り決め、米国や中東で使われる製品については英国のコンサルタント会社が調整していたという。マリンホースの世界市場規模は約100億円で、6社がシェアの約9割を占めるという。同カルテルを巡っては、今年5月に日米欧の独禁当局が調査を開始していた。』

送油ホース国際カルテル事件は、大手ゴムメーカー、横浜ゴム(東京)の米司法省への自首・減免申請(リーニエンシー)が発端でした。リニエンシーの利用が、米司法省と公正取引委員会などによる2007年5月の摘発及び今回の公正取引委員会による課徴金及び排除措置命令の発令に繋がったものです。米国司法省は、申請受理後、同社の協力でカルテルのメンバーになりすましておとり捜査を仕掛けたとみられ、一斉逮捕につなげたのです。

横浜ゴムは、防衛庁(当時)のタイヤ調達をめぐる談合事件などで2度、公正取引委員会に摘発されており、2004年には事実上、マリンホースのカルテルから脱退していました。そのため、協力することを決め、カルテルに関する当時の資料を提供したとされています。米国司法省は、横浜ゴム担当者になりすまし、そのメールアドレスを使ってコンサルタントらとやりとりを開始しました。メンバーは数年間、会合を開いていなかったとされるが、5月初め、米ヒューストンのホテルで会合を開くことになりました。 ホテルでの話し合いが終わった直後に、米国司法省の捜査員らが踏み込み、横浜ゴムの担当者をのぞく参加者を逮捕。ブリヂストン担当者も米国内の滞在先で逮捕しました。 横浜ゴムは2006年暮れ、日本、欧州委員会と英国などリーニエンシー制度のある国に同時申請したとみられ、公正取引委員会は、米国司法省の強制捜査着手を待って立ち入り調査に入りました。

米国司法省のプレスリリースはこちらから入手できます。

Authored by Dr. Inoue

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About the Author

Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。