国際カルテルの最近のブログ記事

2008年11月24日、欧州委員会は、立入調査を実施しましたね。適用法条は、EC条約第81条及び第82とされています。欧州委員会は、かねてから製薬業界一般について、1/2003、17条に基づく調査を実施してきましたが、今回の立入調査との関連については否定しています。なお、製薬業界一般についての調査結果については、2008年11月28日に公表される見込みです。Reported by Dr. Inoue

2008年11月12日、欧州委員会は、板ガラスカルテルの当事者である4社に対して、合計で総額約13億8389万6000ユーロ(約1700億円)の制裁金賦課決定を発令しましたね、内訳は、サンゴバン8億9600万ユーロ、ピルキントン3億7000万ユーロ、旭硝子1億1350万ユーロ、ベルギーのソリバー439万6000ユーロ。サンゴバンへの制裁金は、1社として過去最高でした。4社は1998年から03年ごろ、欧州主要都市のホテルや空港などで定期的に会合を開催し、ガラスの販売を決めるなど価格カルテルを結んだほか、顧客の割り振りや情報の交換をしていたことが認定されています。欧州の自動車向けガラス市場は年20億ユーロに上り、4社が市場の90パーセントのシェアを占めています。旭硝子は調査に協力したため、制裁金を半額免除されました。サンゴバンは違反を繰り返したため、増額認定を受けています。なお、欧州委員会が、立入調査を実施したのは2005年2月、異議告知書を送付したのは2007年4月でしたReported by Dr. Inoue

 

2008年7月10日、欧州委員会は、加盟国の競争当局とともに、2つの加盟国において、穀物及びその他の農業製品の流通業者に対して立入調査を実施したと発表しましたね。欧州委員会の発表では、EC条約第81条違反の事実があったと疑うに足りる十分な理由があるとのことですが、詳細については、今後の発表を待つ必要がありそうですね。

Reported by Dr. Inoue

2008年1月16日に実施されたドーンレイドに関連して、欧州委員会が調査を強化しているとの報道が一斉になされましたね。2008年1月16日のドーンレイドについては、当情報局からもご報告したところでした。欧州委員会は、ジェネリック薬品が欧州市場で普及しない原因について分析を進めており、その原因として反競争的な行為がなされている可能性について調査を進めています。欧州委員会は既に100以上の製薬会社に質問状を送付し、また80ほどの医療機関から情報を取得していると報道されています。欧州における製薬市場の分析結果については2008年秋にプレリミナリーレポートが完成し、2009年秋には最終版のレポートが完成の予定です。現在のところ、欧州委員会は、反競争的な行為の有無にかかる事実認定について、何らの結論にも達していないとしています。

Reported by Dr. Inoue

ガス絶縁開閉装置カルテルにおいて、欧州委員会は公正取引委員会に対する連絡を怠り、公正取引委員会が欧州委員会の調査の進捗状況を知ったのは、制裁金賦課決定段階であることが明らかになりましたね。

本件では、異議告知書の送付直後にブラジルの競争当局が調査を開始するなど、調査が拡大していたにもかかわらず、公正取引委員会が調査を開始しないのは理由があるのではと当初から分析されていましたが、その理由がようやく明らかになりました。

当該カルテルでは、Arevaが、2004年1月にAlsoton AGからカルテルに従事した部門を買収しており、DDでも判明しなかったことを理由に制裁金の減額を主張しましたが、欧州委員会は、全く聞く耳を持たず、わたくしが10年以上前から警告しているM&Aに潜む競争法違反の爆弾の威力が破壊的であることが実証された事案でもありました。

以下、2008年4月15日付けの読売新聞の引用です。

『三菱電機や東芝など日本と欧州の重電メーカー10社が昨年1月、欧州連合(EU)の執行機関・欧州委員会からEU競争法違反で計約1200億円の制裁金を命じられた変電装置の国際カルテルで、欧州委からの通報がなかったために、公正取引委員会がカルテルの調査に入れなかったことがわかった。

違反とされた行為は独占禁止法に抵触するが、公取委はカルテルの実態を解明する機会を失った。欧州委による日本企業の調査は今後も続くことが確実で、公取委は通報態勢の改善を求めた。

通報があれば、公取委は再発防止を求める排除勧告を出し、カルテルに加わった企業に数十億円の課徴金を科せた可能性がある。

日本とEUは2003年7月に、カルテルや企業合併の調査で連携することを定めた「独占禁止協力協定」を締結した。協定には、相手の利益に影響する違反行為の調査などを相互に通報する規定が設けられている。

欧州委は通報しなかった理由を「忘れていた」などと弁明しているが、公取委は京都市で14日に開会した「国際競争ネットワーク」年次総会出席のために来日した欧州委幹部に通報態勢の改善を求めた。

問題とされた装置はガスの圧力で電流を調節するガス絶縁開閉装置(GIS)で、欧州委は、スイスのメーカーABBから04年3月にカルテルを結んでいたとする申告を受理。2か月後に立ち入り検査に着手した。

調査の結果、三菱電機、東芝、日立、富士電機ホールディングス、日本AEパワーシステムズの日本5社とシーメンスなど欧州6社が1998年以降、日本企業は欧州の、欧州企業は日本の市場にそれぞれ参入しないなどの市場分割に合意したと認定。07年1月に日本5社に約400億円、申告したABBを除く欧州5社に対し約800億円の制裁金を命じた。

検査着手から制裁金決定までの約2年8か月間、公取委には通報がなく、制裁金の発表でカルテルの存在を把握した。カルテルは日本市場にも及んでおり、調査の対象になるはずだったが、排除勧告の時効は過ぎ、課徴金納付命令の期限も約4か月後に迫っていた。

調査会社によると日本のGIS市場は約500億円と推計され、制裁金を科せられた5社が上位を占めている。公取委の調査でカルテルが裏付けられれば日本企業への課徴金だけで数十億円になった計算だ。』

Reported by Dr. Inoue

ソニーが4720万ユーロ(約75億円)の制裁金を欧州委員会に支払うことに同意の方向ですね。

2007年11月、欧州委員会は、日立マクセル、富士フイルムホールディングスに対しても制裁金の支払いを命じ、日立マクセルは1月、1440万ユーロ(約23億円)の制裁金の支払いに応じると発表しているところです。制裁金1320万ユーロ(約21億円)を科された富士フイルムは「対応を検討中」としています。

制裁金納付命令を発令した際、クルス委員は、制裁金減免申請による資料提供がなくてもカルテルを摘発できること、調査妨害は厳罰につながることを明言しています。クルス委員の発言による限りですが、カルテルに対する厳しい摘発という方針が変更される兆候は見られません。

日本企業としては、欧州委員会の執行方針と戦略について、綿密な分析を前提とした防波堤の建設を急ぐ必要があるといえます。

Reported by Dr. Inoue

Epson Imagingがカルフォルニア州に係属していた液晶パネルの価格協定に関する民事訴訟を取り下げましたね。2008年1月16日、Judge Susan Illstonが裁判所の決定を発令したものです。なお、取り下げの理由は、現在のところ、明確にされていません。本件訴訟では、液晶パネルの直接の購入者である各社が、日立や東芝、サムスンといった液晶パネルの製造業者が、1996年1月1日から2006年12月11日にかけて、意図的に価格を吊り上げたとして、同社らに損害賠償を求めているものです。なお、液晶パネルの価格協定事件では、2006年12月、欧州委員会が、米国司法省、並びに日本及び韓国の公正取引委員会の調査と協力して調査を進めることが公表されて以後、消費者による、液晶パネルの製造業者に対する損害賠償訴訟が増加しています。価格カルテルの調査の行方は、当然、頻発している民事訴訟の帰趨にも影響を与えそうです。

Reported by Dr. Inoue

2007年は欧州に限らず、日本企業が関与した国際カルテルの摘発が相次いだ1年でした。欧州競争法違反の場合には、制裁金を払うだけですので国際カルテルに関与した企業の担当者に対する負担は、想定の範囲内といえます。そうしますと、想定の範囲外の事情として分析の対象とすべきは、欧州で摘発された国際カルテルにつき、米国でも摘発の対象になった場合の担当者に対する負担といえます。

国際カルテルにより米国反トラスト法に違反した場合には刑事罰の対象です。個人に対しては懲役刑が用意されています。1999年まで、米国司法省は、反トラスト法違反で、外国人を米国の刑務所に服役させることを回避してきましたが、現在では20カ国を超える外国人が米国の刑務所で服役しています。また、刑に服さない外国人に対しては、ボーダーウォッチの対象になり犯罪人引渡条約及び国際刑事警察機構の国際手配書の活用により、米国以外に居住している場合でも、積極的に逮捕・送還を進めています。なお、有罪答弁をしたものに対しては、刑の服役が終了後、米国への入国が自由に認められれるように司法省と移民帰化局との間で協定が結ばれています。競争ネットワークの活用が進んでいるので、米国の裁判所からの償還を無視した場合には、事実上、日本から出国できず、出国した場合には、逮捕・送還される可能性が高まっています。欧州委員会により国際カルテルが摘発され、かかる摘発により米国司法省が摘発に動く場合には、企業の担当者、とりわけ、国際カルテルに関与した可能性を疑われかねない担当者としては、負担がスノーボール的に膨らむ可能性があるといえます。

Reported by Dr. Inoue

欧州委員会は、2007年12月21日、世界の複数の航空会社に対し、国際航空貨物事業で価格カルテルを結び、EU競争法に違反した疑いがあると指摘した異議告知書を送付しましたね。欧州委員会のプレスリリースについては、こちらから参照することができます。この件については、欧州委員会の立入調査について、既にご報告していたところです。以前の記事はこちらから入手できます。

日本航空と全日本空輸も、同日、告知書を受け取ったことを公表しました。EU競争法違反と判定されれば、各社は年間の世界総売上高の最大10%を上限とする巨額制裁金を科せられる可能性があります。

欧州委員会は告知書の送付先を明らかにしていませんが、北欧のスカンジナビア航空も受け取りを認めています。

欧州委員会はEU加盟国や米国司法省と連携し、米アメリカン航空、英ブリティッシュ・エアウェイズなどを含む米欧アジアの航空大手を対象に調査に入っていました。告知書受領者から提出される答弁書と聴聞手続を経て、欧州委員会は、EU競争法違反の事実の有無について分析を進めると思われます。欧州委員会の分析は、異議告知書の送付から6ヶ月ないし最長で1年ほどかかるものとみられます。

Reported by Dr. Inoue

国際フォワーディングカルテルの審査では、今後、答弁書が提出され、聴聞手続が実施されますが、欧州委員会の審査手続では、書面が重視され、聴聞手続は補助的な位置づけであるのが実務的な扱いです。よって、欧州委員会の異議告知書記載の事実に対して争う場合には、答弁書と証拠の提出が極めて重要です。

聴聞手続では不服申立人も意見を述べることができます。また、他の第三者も十分な正当な利益を証明できれば、聴聞の機会を認められます。欧州委員会は、意見を聞くため必要なものは誰でも聴聞に出席させることができます。

当事者は、代理人を選任することが可能ですが、原則として自分で聴聞に出席することが義務付けられています。異国の地での手続は非常に緊張するので、日本企業の担当者が聴聞に出席する場合には、十分なリハーサルが欠かせません。聴聞は公開ではありませんが、加盟国の競争当局職員も参加することが可能です。

Authored by Dr. Inoue

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