Oral Hearingにおける審理
欧州委員会におけるOral Hearingについては以前にも解説したところですが、今回は、もう少し、実務的ないし実際上の経験に基づく解説をしたいと思います。
Oral Hearingは通常1回だけ開催され、その期間は非常に短いです。多くの場合は1日で、半日のこともあります。複雑な事件では2日にわたることもありますが、極めて例外的です。なお、マイクロソフト事件のときは3日かかったそうです。
Oral Hearingまでに当事者は自由に書面を交換することができ、実際上は、この書面交換により議論は尽きているとみなされています。Oral Hearingでは当事者が、お互いの主張を持ち時間の中で整理して主張するだけですから、セレモニー的な色彩が強いといえます。実際上も、日本における裁判の口頭弁論や、Adversary Systemを採用している米国における手続とは相当程度勝手が異なるという印象が少なくありません。Oral Hearingでは、Hearing Officerが手続を開始し、まず、case teamに事実及び欧州委員会の法的構成についての主張の要約を行わせます。その後、当事者の口頭によるプレゼンテーションが行われます。Oral Hearingにおいて、Officerは証拠の実体面について判断をすることはありませんが、コメントすることはあります。Hearingでは、各国のOfficerが出席しており、通訳を介して、当事者のプレゼンテーションを聞く機会が与えられます。各国のOfficerから当事者に質問がなされ、当事者がこれに回答をします。最後に、欧州委員会及びHearing Officerから当事者に対して質問がなされ、当事者がこれに対して回答します。反対尋問権は保障されていませんが、Hearing Officerに対して、関係者に質問をするよう求めることができますし、手続がヒートアップすると、Hearing Officerを介さずに直接質問と回答がなされることもままありますので、事実上、反対尋問をする機会があるといえます。
Hearing Officerは手続上の判断権限を有しているだけで、作成するレポートも手続的観点を中心としたコメントのようなもので、決定書を起案する際の基礎を構成しているとは思えないものです。
このように欧州委員会におけるOral Hearingは、行政手続の一環として最低限の手続保障だけを狙った手続であり、日本における刑事訴訟のような手厚い手続的保護が図られている手続とは異なる、どちらかというと形式的な手続といえます。
Authored by Dr. Inoue
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