デ・ミニマス・ドクトリン

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EC条約第81条第1項の文言上、企業間の協調的行動は、広くその適用対象となります。

その結果、同条項の文言による限り、同第2項に基づき、企業間のほとんどの協調的行動が無効となります。しかし、企業間の協調的行動のすべてを無効とすることは、経済的実情にそぐわないものです。EU競争法は、このような事態を避けるための方策として、反トラスト法における合理の原則を採用するという方法をとらず、EUに特有の適用除外審査基準を採用しています。すなわち、欧州委員会は、競争制限的効果が、知覚できる(appreciable)程度に達しない協調は違法としません。この知覚できる程度という要件は、デ・ミニマス・ドクトリン(de minimis doctrine)として広く認知されています。欧州委員会は、1970年に、小さい契約に関する告示を出して、デ・ミニマス・ドクトリンの内容を明確化しました。その後、当該告示は、数回改定されています。2001年版のガイドラインでは、以下のようにその要件を定めています。
① 競争関係にある企業の間での契約については、関連市場における契約当事者の市場占有率の合計が10パーセントを超えないときは、EC条約第81条第1項の対象とはしない。
② 競争関係にない企業の間での契約については、関連市場における各契約当事者の市場占有率が15パーセントを超えないときは、EC条約第81条第1項の対象とはしない。
③ ただし、累積的な取引排除の効果があるときは、競争関係のあるなしにかかわらず、契約当事者の市場占有率の上限は5パーセントとする。

Authored by Dr. Inoue

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このページは、Dr. Inoueが2007年12月15日 22:59に書いたブログ記事です。

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Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。