EC条約第81条違反の効果

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EC条約第81条違反に対する罰則は、行政罰としての制裁金の賦課であり、刑事罰は用意されていません。欧州委員会は、違反行為の悪質性と重大性に応じて、制裁金の金額を加減する裁量を有しています。EC条約の下での制裁金の金額は、当該企業の全世界における年間売上の10パーセントあるいは100万ユーロのうち金額の多額な方が上限です。わが国の課徴金制度とは、制裁金の算定率こそ同様ですが、算定の対象となる売上が異なり、これが、欧州委員会において、カルテル行為に対して高額な制裁金納付命令の発令を可能とする要因の一つです。欧州委員会の制裁金納付命令に対しては、第一審裁判所(Court of First Instance)に対して、また、第一審裁判所の決定に対しては、欧州裁判所(European Court of Justice)に控訴することができます。欧州委員会は、制裁金計算の透明性を高めるため、制裁金の算定方法を説明するガイドラインを明らかにしています。最近のものは2006年9月に出されたものです。 同ガイドラインによると、欧州委員会は、違反行為の重大性および存続期間を確定して制裁金額を計算し、さらには違反行為にかかわる加重または軽減要因に基づき上下に調整することができるとされています。たとえば、カルテルの繰返しやカルテルにおいて首謀者的な役割を果たしたことなどは、制裁金の引上要因を構成します。他方で、カルテルにおける消極性や欧州委員会に対する協力は引下要因を構成します。

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このページは、Dr. Inoueが2007年12月15日 05:07に書いたブログ記事です。

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Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。