特殊炭素材事件
欧州における国際カルテル事件といいますと、特殊炭素材事件も有名です。リニエンシーの利用が審査開始のトリガーになっている点も重要なポイントです。
本件は、欧州市場における2種類の特殊炭素材に関するカルテルであり、Graftech International (前UCAR International)社が、リニエンシーを利用して制裁金の免除を申請したことから、欧州委員会による調査が開始されたものですカルテルメンバーは、Graftech International社、Intech社、 Ibiden社、 Carbone-Lorraine社、 Toyo Tanso社、SGL社、東海カーボン、および新日鉄化学でした。カルテルメンバーは、1993年7月23日、御殿場で開催されたトップ会談において、世界市場を見据えたカルテルの内容について合意し、以後、1998年2月まで、カルテルの実施および実施内容に対する監視が行われました。トップ会談は、常に日本で開催され、地域別の会議も持たれています。欧州委員会は、調査の結果、カルテルの存在を認定し、同カルテルがEC条約第81条第1項に反するとした上で、SGL社をカルテルの首謀者として認定し、制裁金を50パーセント加算しました。他方で、Intech社については、Ibiden社の指示によりカルテルに参加していただけで、主導的な役割を果たしていなかったことを理由として、制裁金の金額を40パーセント減額しました。また、SGL社、Ibiden社、 Carbone-Lorraine社、 Toyo Tanso社、東海カーボン、および新日鉄化学については、追加資料を提出して欧州委員会の調査に協力したので、制裁金の35パーセントが減額されました。また、SGL社については、経営悪化の状態にあり、他のカルテル事件で摘発されたことにより8020万ユーロの制裁金の支払義務があることが考慮され、33パーセント制裁金が減額されました。上記の結果、リニエンシーの適用を申請したGraftech International社については、制裁金が免除されています。また、欧州委員会は、Intech社に対して98万ユーロ、 Ibiden社に対して358万ユーロ、 Carbone-Lorraine社に対して697万ユーロ、 Toyo Tanso社に対して697万ユーロ、SGL社に対して2775万ユーロ、東海カーボンに対して697万ユーロ、および新日鉄化学に対して358万ユーロの支払を命じました。
Authored by Dr. Inoue
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