エルピーダ国際カルテル事件

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1999年に日本電気と日立製作所のDRAM事業を統合する形で発足したエルピーダ社は、DRAMを巡る国際カルテルに参加したことを認め、2006年1月30日、8400万ドルの罰金の支払に同意しました。エルピーダ社の元重役のジェームズ・ソガス氏も、米国で7ヶ月の禁固刑および25万ドルの罰金の支払に合意しました。

上記に関する提訴も含め、4社および5名がDRAMを巡る国際カルテルに参加したとして提訴され、総額7億3000万ドルの罰金が支払われました。サンフランシスコ地区地裁に提出された訴状によると、1999年4月から2002年6月の間、エルピーダ社は、他のDRAM製造業者と共謀して一定のコンピューターおよびサーバー製造業者に販売したDRAMの価格を設定したとされました。当該国際カルテルから影響を受けた企業は、デル社、コンパック社、ヒューレーットパッカード社、アップル社、IBM社、およびゲートウェー社でした。

さらに、2002年3月、エルピーダ社は他のDRAM業者と共同してサンマイクロシステムズ社が発注した1ギガバイト・次世代の電極2列が並んだメモリー・モジュール1ロットの入札において談合しました。サンフランシスコ地区裁判所の承認が義務付けられている本件有罪答弁協定書に基づきエルピーダ社は他のDRAM製造業者に対する米国司法省の調査に協力しなければならないとされていました。

 DRAMは、もっとも一般的に使用されている半導体メモリー部品であり、コンピューター、電気通信、および家庭電器に電子情報の高速保存および抽出機能を提供しているものです。DRAMは、パソコン、ラップトップコンピューター、ワークステーション、サーバー、プリンター、ワークステーション、サーバー、プリンター、ハードディスクドライブ、電子秘書、モデム、携帯電話、電気通信ハブまたはルーター、デジタルカメラ、ビデオ・レコーダーおよびテレビ、およびゲーム機器などに利用されています。米国におけるDRAM販売は、2004年、約77億ドルでした。エルピーダ社は世界第5位のDRAM製造業者でした。

訴状によると、エルピーダ社は、米国およびその他の地域で競争者と共同して一定の顧客に対して販売したDRAMの価格を交渉する会議、会話、およびコミュニケーションに参加し、それらの会議、会話、およびコミュニケーションで一定の顧客に一定水準の価格を課すことを合意し、当該合意に基づく価格クォートを発し、合意された価格の遵守をモニターおよび実施するため、一定顧客に対し販売したDRAMの情報を交換することにより、価格協定を実施しました。

また、訴状によると、エルピーダ社は、米国およびその他の地域でサンマイクロシステムズ社が発注する1ギガバイト・次世代の電極が2列並んだメモリー・モジュール1ロットをそれぞれで受注調整する会議、会話およびコミュニケーションに参加し、それらの会議、会話およびコミュニケーションでサンマイクロシステムズ社が発注する当該ロットを受注調整することに合意し、当該合意に基づき、サンマイクロシステムズ社の発注を受注調整し、サンマイクロシステムズ社に対して競争的価格を奪い、サイマイクロシステムズ社が発注する当該ロットの入札の受注予定者を議論する会議、会話およびコミュニケーションに参加し、それらの会議、会話およびコミュニケーションで受注予定者が受注できるように協力すること合意し、また当該ロットに対して受注予定者が受注できるように協力することにより、当該入札談合を実施したものです。

2004年、ドイツのインフィネオン・テクノロジー社は有罪を認め1億6000万ドルの罰金を支払い、2005年5月、韓国のヒュニック・セミコンダクター社は有罪を認めて1億8500万ドルの罰金を支払い、2005年11月には、韓国のサムスング・セミコンダクター社および同親会社のサムスング・エレクトロニクス社が有罪を認めて3億ドルの罰金を支払いました。なお、2004年12月には、インフィネオン・テクノロジー社の重役4名は、国際カルテルに参加したことを認め、4ヶ月から6ヶ月の禁固刑に服し、25万ドルの罰金を支払いました。

Authored by Dr. Inoue

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Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。