取消訴訟の対象となる欧州委員会の決定

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欧州委員会は、EU競争法の執行機関として強大な権限を有していますが、法的コントロールに服さないわけではありません。EC条約第230条により、欧州司法裁判所に取消訴訟を申し立てることができます。1989年に欧州第一審裁判所が設立されて以来、欧州委員会の決定に対する不服申立ては、まず、欧州第一審裁判所に申し立てることとされました。取消訴訟の対象となる事件は、①EU競争法違反の存在を宣言する決定、②情報請求や立入検査に服することを命令する決定、③不服申し立ての拒否や事件の終結を宣言する最終決定、④企業集中が共通市場に調査する、あるいは調和しないと宣言する決定、及び⑤そのほかの決定です。取消理由は比較的範囲が広く、手続違反、権限濫用、平等原則違反、正当な期待違反なども含まれます。欧州委員会から制裁金決定を受領した場合には、取消訴訟を提起するかどうか分析する必要があります。取消訴訟の提起により、かえって、制裁金額が高くなってしまうことも理論上はあり得ます。

Authored by Dr. Inoue

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このページは、Dr. Inoueが2007年12月12日 12:46に書いたブログ記事です。

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Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。