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欧州第一審裁判所に対する取消訴訟の提起は、欧州委員会の決定に対する停止の効果はありませんが、第一審裁判所は、場合によっては、このような効果を認めることがあります。裁判所は必要な暫定措置を取ることもできます。そのため、申立人は、暫定措置を、裁判所に申請することができますが、最終的な判決を害するような法や事実をゆがめる行為は許されません。また、主要な手続が継続中の場合にのみ申請することができます。執行猶予や暫定措置を申請するためには、申立人は、以下のような条件を満たす必要があります。すなわち、①緊急性が認められること。すなわち、重大で回復不可能な損害を避けるために措置が必要であることの証明、②申立人は、執行猶予や暫定措置がとりあえず正当化される事由を述べること。すなわち、全く根拠のない主張ではないこと、および③裁判所が関係者の利益のバランスを考慮し、措置が適切であると判断することがその条件です。

Authored by Dr. Inoue

欧州委員会の決定の取消請求は、決定の発表、当事者への通知、あるいは当事者が他の方法で知ることができた日から、2ヶ月以内に欧州第一裁判所に提起しなければなりません。この期間は距離により10日間まで延長されることがあります。2ヶ月の期間は、決定の通知の場合、その翌日から起算されますが、決定の発表の場合には、EU官報に掲載された次の日から14日目から起算されます。通知と官報掲載のいずれもなされる場合には、いずれか早いほうから起算がなされます。実務上は、官報への掲載は、当事者への通知より時間がかかります。

Authored by Dr. Inoue

欧州委員会は、EU競争法の執行機関として強大な権限を有していますが、法的コントロールに服さないわけではありません。EC条約第230条により、欧州司法裁判所に取消訴訟を申し立てることができます。1989年に欧州第一審裁判所が設立されて以来、欧州委員会の決定に対する不服申立ては、まず、欧州第一審裁判所に申し立てることとされました。取消訴訟の対象となる事件は、①EU競争法違反の存在を宣言する決定、②情報請求や立入検査に服することを命令する決定、③不服申し立ての拒否や事件の終結を宣言する最終決定、④企業集中が共通市場に調査する、あるいは調和しないと宣言する決定、及び⑤そのほかの決定です。取消理由は比較的範囲が広く、手続違反、権限濫用、平等原則違反、正当な期待違反なども含まれます。欧州委員会から制裁金決定を受領した場合には、取消訴訟を提起するかどうか分析する必要があります。取消訴訟の提起により、かえって、制裁金額が高くなってしまうことも理論上はあり得ます。

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