欧州第一審裁判所における審理

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カルテル事案、あるいは企業結合事案で欧州第一審裁判所に提訴される事例についてのニュースを耳にする機会が増えてきた。欧州第一審裁判所での平均審理期間は2~3年であり、しかも、実質的証拠法則が適用されるので、裁判所で争えば勝機が広がるという戦略の立て方はしないほうがよいというアドヴァイスを依頼者にしたのが6年ほど前の2002年7月であるが、このアドヴァイスが前提としている事実及び状況は、2008年になってもあまり変わるところがない。

欧州競争法における実質的証拠法則は、規則中に明文があるわけではありませんが、判例により形成された法理で、厳然と存在しています。そのため、原理・原則から言うと、欧州委員会の事実認定はManifest Errorがない限り、欧州第一審裁判所でも覆すことができません。また、新証拠の提出に関しても、証拠はすべて欧州委員会で提出すべきものとされていますから、相手方に開示していない新たな証拠の提出は難しいのが実情です。

但し、評価的な内容を含む事実(日本法でいうところの評価的根拠事実)については、争いがある場合には、実質的証拠に支えられていないとして欧州第一審裁判所が自ら判断することが、まま、あります。2度目の異議告知書について聴聞手続を拒否したマイクロソフトのように欧州第一審裁判所で争うとの戦略をとる場合、争点となる事実の性質についての見極めが重要であるといえます。

Authored by Dr. Inoue

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このページは、Dr. Inoueが2008年1月 6日 23:17に書いたブログ記事です。

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Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。