国際カルテルと企業の担当者

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2007年は欧州に限らず、日本企業が関与した国際カルテルの摘発が相次いだ1年でした。欧州競争法違反の場合には、制裁金を払うだけですので国際カルテルに関与した企業の担当者に対する負担は、想定の範囲内といえます。そうしますと、想定の範囲外の事情として分析の対象とすべきは、欧州で摘発された国際カルテルにつき、米国でも摘発の対象になった場合の担当者に対する負担といえます。

国際カルテルにより米国反トラスト法に違反した場合には刑事罰の対象です。個人に対しては懲役刑が用意されています。1999年まで、米国司法省は、反トラスト法違反で、外国人を米国の刑務所に服役させることを回避してきましたが、現在では20カ国を超える外国人が米国の刑務所で服役しています。また、刑に服さない外国人に対しては、ボーダーウォッチの対象になり犯罪人引渡条約及び国際刑事警察機構の国際手配書の活用により、米国以外に居住している場合でも、積極的に逮捕・送還を進めています。なお、有罪答弁をしたものに対しては、刑の服役が終了後、米国への入国が自由に認められれるように司法省と移民帰化局との間で協定が結ばれています。競争ネットワークの活用が進んでいるので、米国の裁判所からの償還を無視した場合には、事実上、日本から出国できず、出国した場合には、逮捕・送還される可能性が高まっています。欧州委員会により国際カルテルが摘発され、かかる摘発により米国司法省が摘発に動く場合には、企業の担当者、とりわけ、国際カルテルに関与した可能性を疑われかねない担当者としては、負担がスノーボール的に膨らむ可能性があるといえます。

Reported by Dr. Inoue

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このページは、Dr. Inoueが2008年1月 8日 22:59に書いたブログ記事です。

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Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。