クルス委員によるプレスリリース2007年12月11日

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2007年12月11日のクルス委員によるプレスリリースは、カルテル撲滅を最優先の課題とする欧州委員会の政策を分析するのに格好の材料といえます。リリースの原文は、こちらから入手することができます。

カルテル撲滅は、2004年にクルス委員が就任して以来、欧州委員会にとっての最優先の政策課題であり、かかる方針は今後も堅持されることが相当程度予想されます。プレスリリースでも、カルテルが違法であるばかりでなく、消費者への影響が看過できないことを冒頭で強調されており、カルテル撲滅とうい政策方針を堅持することが伺われます。なお、欧州委員会の発足以来2007年12月15日までの間で、欧州委員会がカルテルの当事者に課した制裁金の総額は50億ユーロを超えるという。50億ユーロを超える制裁金は、欧州共同体加盟各国の予算として分配され、終局的には消費者に還元されるばかりでなく、巨額の制裁金により、カルテルの再犯が抑止されていることが強調されています。

プレスリリースの末尾では、端的に、”of course we will continue vigorously fight cartels in the coming years”と述べられています。

クルス委員の発言は、就任以来、カルテル撲滅という点で首尾一貫しており、今回のリリースも、首尾一貫した政策方針が反映されたものといえます。

リリースによると、欧州委員会がカルテル撲滅をより推進するために追加的に導入を検討している手段は、カルテルの事実について争いのない案件について早期に案件を終結することのできる手続の導入と、欧州委員会による執行を補完するものとしての私人がカルテルの当事者に対してより容易に損害賠償請求訴訟を提起できるような制度の導入です。私人による損害賠償請求については、2008年初頭にも欧州委員会から案が明らかにされるという。米国型の三倍賠償制度やクラスアクション制度の導入に踏み切るのか、欧州委員会の案に注目したいと思います。

Reported by Dr. Inoue

 

 

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このページは、Dr. Inoueが2007年12月26日 23:08に書いたブログ記事です。

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Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。