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2008年9月19日、クルス委員がcartel settlement procedure関するスピーチを実施しましたね。同手続は2008年6月30日に制定され、同年7月1日から運用されているものです。クルス委員のスピーチでは、同手続の導入が、カルテルに対する執行をいささかでも弱めるものではなく、寧ろ、同手続の導入は、カルテルのより効果的な摘発を目的としたものであることが明確に述べられています。10パーセントの制裁金の減額という効果も、手続の簡素化や執行の効率化により正当化できるものであるとされています。cartel settlement procedureについては、以下のリンク先から、詳細を入手することができます。Authored by Dr. Inoue

欧州委員会の手続が開始された後、関係当事者が記録を謄写する方法としては、CDROMの送付、資料のコピー文書の送付、委員会事務所での閲覧謄写が選択的に認められていますが、通常、SO送付時にはCDROMが送付されるという方法が選択されていますね。SO送付時には、資料の列挙目録も添付され、資料の概要が記載されているので、非閲覧謄写資料の特定に役立ちます。非閲覧謄写資料の謄写申請は、委員会宛に書面でしますが、競争総局長が認めない場合には、最終的には聴聞主宰官が判断します。どの記録を開示請求するか、どの資料を狙うのか決める材料となるのが列挙目録です。記録謄写は、手続を通じた戦略立ての基礎になるので、どの資料を狙うのか決めるのは実務上非常に重要です。

Authored by Dr. Inoue

 

2008年6月2日、欧州委員会は、sanofi-aventis SAに対する正式手続を開始したと発表しましたね。これは、本情報局でも報告した2008年1月15日から18日にかけて、製薬業界の調査の一環として実施されたsanofi-aventis SA社のフランス本社に対するドーンレイドにおいて、調査妨害が行われたことを理由とするものです。欧州委員会の発表によれば、ドーンレイドにおいて、欧州委員会職員が関連性のある書面を特定したにもかかわらず、会社側は、精査及び複製の作成を拒否して調査妨害に及んだとされています。

Reported by Dr. Inoue

皆様、明けましておめでとうございます。本年も、どうぞ宜しくお願いいたします。

拙著Japanese Antitrust Law Manualが米国Library of Congressに所蔵されました。本書は、日本の独占禁止法についてわが国の実務家が英文で執筆した始めての書籍です。北米ではAspen Publishingが販売をしております。本書は、欧州競争法及び米国反トラスト法と日本の独占禁止法の差異を前提に、欧米の依頼者に日本の独占禁止法上の問題点を理解させるにはどのような視点で分析すればよいかという実務上の視点から執筆されたものです。欧州競争法や独占禁止法の実務に従事される実務家や研究者、学生がその手にとって参照されるのを願ってやみません。なお、本書については、現在第2版出版のための執筆作業が進行中です。

Written by Dr. Inoue

2007年12月11日のクルス委員によるプレスリリースは、カルテル撲滅を最優先の課題とする欧州委員会の政策を分析するのに格好の材料といえます。リリースの原文は、こちらから入手することができます。

カルテル撲滅は、2004年にクルス委員が就任して以来、欧州委員会にとっての最優先の政策課題であり、かかる方針は今後も堅持されることが相当程度予想されます。プレスリリースでも、カルテルが違法であるばかりでなく、消費者への影響が看過できないことを冒頭で強調されており、カルテル撲滅とうい政策方針を堅持することが伺われます。なお、欧州委員会の発足以来2007年12月15日までの間で、欧州委員会がカルテルの当事者に課した制裁金の総額は50億ユーロを超えるという。50億ユーロを超える制裁金は、欧州共同体加盟各国の予算として分配され、終局的には消費者に還元されるばかりでなく、巨額の制裁金により、カルテルの再犯が抑止されていることが強調されています。

プレスリリースの末尾では、端的に、”of course we will continue vigorously fight cartels in the coming years”と述べられています。

クルス委員の発言は、就任以来、カルテル撲滅という点で首尾一貫しており、今回のリリースも、首尾一貫した政策方針が反映されたものといえます。

リリースによると、欧州委員会がカルテル撲滅をより推進するために追加的に導入を検討している手段は、カルテルの事実について争いのない案件について早期に案件を終結することのできる手続の導入と、欧州委員会による執行を補完するものとしての私人がカルテルの当事者に対してより容易に損害賠償請求訴訟を提起できるような制度の導入です。私人による損害賠償請求については、2008年初頭にも欧州委員会から案が明らかにされるという。米国型の三倍賠償制度やクラスアクション制度の導入に踏み切るのか、欧州委員会の案に注目したいと思います。

Reported by Dr. Inoue

 

 

欧州委員会が発表している統計資料によると、2006年以降の摘発件数及び制裁金額の高額化の傾向が顕著ですね。

欧州委員会のクルス委員は、2004年の就任以来、「カルテル撲滅」を最重要の政策課題に掲げており、統計資料は、政策方針が反映された結果といえます。また、EUでは、経済成長と雇用創出を目指すための国家戦略とも言うべき「リスボン戦略」において競争法をその重要手段として位置づけています。欧州委員会の「カルテル撲滅」という政策課題は、「リスボン戦略」による後ろ楯がある以上、当面は堅持されるであろうと予想されます。

Reported by Dr. Inoue

日本航空が燃油価格高騰に対応して、国際貨物の通常運賃に上乗せする燃油特別付加運賃を他社と共謀し決めていたとして、2006年2月に米司法省などから米国支店の貨物事業所などが立ち入り捜査を受けたことは記憶に新しいですが、欧州委員会も、国際貨物フォワーディングに関するカルテルについて調査を開始しましたね。欧州委員会のプレスリリースについては、こちらから入手できます。

Authored by Dr. Inoue

2007年9月14日に実施されたクルス委員と竹島委員長との会談で、「欧州委員会の摘発の重点は価格カルテル」であることが確認されていますね。以下、日本経済新聞からの引用です。

『日本の竹島一彦公正取引委員長と欧州連合(EU)のクルス欧州委員は14日、ブリュッセルで日・EUの競争政策に関するハイレベル協議を開いた。席上、竹島委員長は日本の独占禁止法の強化などについて説明。クルス委員は価格カルテルの摘発に重点的に取り組んでいく考えを示した。両者は日・EUが独禁政策などで緊密に連携する方針を確認した。』

Authored by Dr. Inoue

欧州委員会は2007年4月18日、価格カルテルを結んだとしてハイネケン(オランダ)などのビール3社に合計で約2億7400万ユーロ(約440億円)の制裁金を命令し、その際、クルス委員(競争政策担当)は記者会見で、「EUは絶対にカルテルを許さない」と企業に警告を発しています。欧州委員会による価格カルテルの積極的摘発は、今後も、継続するとみられます。

Authored by Dr. Inoue

EU競争法の動向をお伝えする「EU競争法情報局」の試験運用を開始しました。本格運用は、2008年初頭を予定しております。どうぞよろしくお願い致します。

Authored by Dr. Inoue

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