DR. AKIRA INOUE, WELCOME TO THE WEB OFFICE OF AKIRA INOUE (PH.D., ATTORNEY
& COUNSELLOR AT LAW, ADMITTED IN JAPAN & NEW YORK STATE, UNITED
STATES OF AMERICA)
文書保存とは訴訟、監査、調査の可能性があると判断された段階で「関連した全ての資料・情報をそのままの状態で安全に保存する」という手続です。文書保存に失敗し、特定の文書を開示することができないと罰則の対象となることもあります。文書保存の対象は、証拠開示の対象となる可能性のある全ての電子記録及び文書等を含みます。実務的には、電子情報については対象となり得るものを全て回収して現状を固定してしまうことが多いといえます。これは、基本的に3つのプロセスから構成されています。まず、保存通達で、これは、訴訟、監査、調査の可能性があると判断された段階で、関連する電子情報の保存義務が生じます。その際にはカストディアンに対して関連電子情報を保存する義務があるとの通達をしなければなりません。次に、電子情報の分別保管で、保存が通達された後に関連する電子情報を収集し、関係の無い情報を除外するカリングを行い、外部からアクセスが出来ない分別された安全なストレージに保管しておく必要があります。これは保存された情報が消去されたり改ざんされたりするリスクを無くすためです。最後に、継続的な保存で、文書保存が執行された以降は、新たに発生した電子メールやファイルも関連するものであれば保存対象となりますので、これらの徹底した管理が必要です。文書保存に失敗したことで、実際に制裁の対象となった事例は少なくありません。例えば、Coleman事件では、同社がSunbeam社を買収する際、仲介したMorgan
Stanley社がSunbeam社の財務状況を不正に修正したとされたのですが、litigation holdを故意にしなかったとして1500万ドルの制裁金がMorgan
Stanley社に課せられました。同事件では、本裁判にも敗訴し15億ドルの損害賠償が命ぜられています(Coleman Holdings v.
Morgan Stanley (Florida Cir. Ct. 2005))。
また、フィリップモリス事件( United States v. Philip Morris USA, Inc., 327 F. Supp. 2d 21 (D.D.C. 2004))では、裁判所から訴訟の争点に関連し得る電子メールの保存を命じられていたにもかかわらず、60日以上が経過した電子メールは毎月削除されるという社内システムを採用していた為、裁判の争点に関連するいくつかのメールが提出できない事態となり、罰金として275万ドルが命じられています。
米国外で訴訟を起こしている当事者は、第1782条に基づき、連邦地方裁判所に対し、外国又は国際法廷で使用するための文書及び証言の提出を対象者(以下「開示対象者」という)に強制するよう申し立てることができます。第1782条の手続は、ハーグ証拠収集条約の下での嘱託書(Letter Rogatory)や要請書(Letter of Request)に基づいて行われる開示請求よりも、比較的短時間かつ、費用も安く、より効果的です。
米国においては、裁判所に対して訴訟当事者以外の者が意見を提出する手段として、法廷助言者(amicus curiae)によるアミカスブリーフ(amicus
brief)提出の制度があります。以前は、関係する分野に精通した弁護士が法廷助言を行うのが典型的でしたが、近年の提出者は様々です。当該裁判所に登録している弁護士の代理を通して、政府職員、会社員、大学教授、学生など多様な法廷助言者が意見を提出しています。アミカスブリーフは、控訴裁判所や最高裁判所に対してしばしば提出されます。連邦上訴手続規則(Federal
Rules of Appellate Procedure)29条に規定されている通り、控訴裁判所がアミカスブリーフを受け入れるのは裁判所が提出を促している場合又は訴訟の全当事者の同意を得て提出された場合に限られます。控訴裁判所が提出を促していない場合は、裁判所の許可を求める形になりますが、その際には(@)訴訟についてどのような関心があるのか、(A)何故そのアミカスブリーフが裁判所にとって有益であるのかを説明し、(B)訴訟の全当事者の同意を得ていることを示す必要があります。アミカスブリーフの提出期限は状況によって異なります。アミカスブリーフが原告側の立場を支持するものの場合は原告側の最初のブリーフ(opening
brief)提出から7日以内、被告側を支持する場合は被告側の最初のブリーフから7日以内に提出する必要があります。一方、訴訟当事者のいずれも支持しない場合は、原告側の最初のブリーフ提出から7日以内にアミカスブリーフを提出しなければなりません。また、法廷助言者が口頭弁論に参加することはまれですが、裁判所から事前許可があって訴訟当事者の同意が得られた場合にのみ弁論を行うことができます。最高裁判所へアミカスブリーフを提出する際には、米国最高裁判所規則(Rules
of the Supreme Court of the United States)37条に従って、その内容に応じて指定の期限内に提出する必要があります。アミカスブリーフを提出した弁護士が最高裁で議論するのは極めてまれで、裁判所から促された時にのみ参加します。
An amicus curiae brief that brings to the attention of the Court relevant matter not already brought to its attention by the parties may be of considerable help to the Court. An amicus curiae brief that does not serve this purpose burdens the Court, and its filing is not favored.
パブリック・ニューサンス(public nuisance)とは、コモン・ロー上、社会人全般が享受すべき健康、安全、平穏、快適、便宜を相当な程度まで妨げる行為のことをいい、不法行為責任のみならず、刑事責任が認定される場合もあります。著名なオピオイド訴訟では、地方政府はパブリック・ニューサンスの法理の下、オピオイド危機を引き起こした企業・個人を相手に訴訟を起こし、過去の経済的損失に対する補償と、現在直面している公衆衛生上の危機の排除・軽減のために将来にわたって必要となる費用の負担を求めているものです。同法理がはじめて適用されたのはGeorgia
v. Tennessee Copper Co., 206 U.S. 230 (1907)です。その後、最高裁判決は修正されたものの、1972年のイリノイ州判決において、州をまたがる河川汚染について、再び、同法理が適用されました(Illinois
v. City of Milwaukee, 406 U.S. 91 (1972))。気候変動訴訟においても、同法理が用いられているし、いわゆるプラスチック訴訟でも、同法理が適用されています。