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HOME金融取引に関わる問題融資先に対する要請と優越的地位の濫用

場合によっては優越的な地位の濫用として、排除措置命令の対象になり得るので要注意です!

金融取引に関わる問題
問題点とリスク

『融資先企業に、融資打切りをほのめかしつつ、自行の関連会社である経済研究所の会員になるように要請した。』

『融資先企業に対して、融資打切りをほのめかしつつ、親会社の業績不振を理由に、既借入分の前倒返済を要請した。』

『融資先企業に対して、要請に応じなければ次回融資が困難になることを示唆して、期末を越える短期間の借入れや一定率以上の借入れを維持した借入れを余儀なくさせた。』

上記に掲げた行為に見覚えのある場合には要注意です。

上記の行為は、場合によっては、優越的地位の濫用規制に違反し、不公正取引に該当するとして、公正取引委員会から排除措置命令や銀行法上の業務停止命令の対象になる可能性があります。

融資先である企業は、継続的融資を受ける必要があります。それゆえ、金融機関は融資先企業と比較して、優越的な地位にあるといえる典型的場合に該当します。

また、具体例で掲げたような要求は、主要な金融機関以外からの要請であれば断ってしまえばよいものですが、主要な金融機関との取引関係を考えるとなかなか断りがたいものです。このような状況を利用して融資先に具体例で掲げたような要求をすることは濫用行為に該当すると判断されやすいといえます。

公正取引委員会の調査によると、金融機関から何らかの要請に断りにくさを感じている企業は30%ほどにのぼっているとされ、これは、融資先企業への要請は濫用と認定され易いという実態を表しているといえます。意思に反して要請に応じた企業の59.8%は、次回の融資に困難が発生することを理由、融資打ち切りによる信用悪化を懸念したことも含めると約73%に上っていますから、次回の融資が実施されるか否かと、意思に反する要請の受諾はリンクされ易く、融資が実施されない場合には、要請を実施したこと自体が、優越的地位を濫用していると認識される可能性があるので注意が必要です。

排除措置命令の対象になると、『独占禁止法に違反した違法行為に従事した企業』というレッテルが貼られることになりますし、排除措置命令が確定すると、民事損害賠償訴訟では、行為の違法性が推定されて敗訴する危険性が高まります。

さらにやっかいなのは、排除措置命令が発令された場合に、当該命令に違反してしまった場合には、刑事罰が適用されることです。刑事罰の重さは、個人については2年以下の懲役又は300万円の罰金、法人については3億円以下の罰金(両罰規定)です

『独占禁止法に違反した企業』というレッテルが貼られてしまったり、業務停止命令の対象になったり、民事損害賠償の対象になるような事態はすべからく避ける必要があります。

上記に加えて、銀行の場合には、銀行法上のリスクを念頭におく必要があります。

優越的地位の濫用規制に違反することにより、法令違反の行為を犯したとして銀行法第26条による業務停止命令や銀行法第27条の免許停止・取消し命令の対象になる場合もあり得ます。銀行法第13条の3、銀行法施行規則第14条の11では、平成18年4月施行の改正銀行法では、優越的地位の濫用規制が規定されるに至っており、独占禁止法上の優越的地位の濫用規制に違反する場合には銀行法違反も成立する可能性があります。

こういった銀行法上のリスクは、三井住友銀行事件において、現実に、同銀行の優越的地位の濫用行為に対して業務停止命令が発令されている現実を前提にすれば、極めて現実性の高いリスクといえます。

問題点の解決方法

第1に融資先企業が自行から運転資金の大半を確保しているような場合には、一切、要請はしないということが考えられます。融資先企業に融資関係を利用して要請に応じさせることに優越的地位の濫用が成立するポイントがあるわけですから、要請をしなければ、優越的な地位の濫用も成立しません。

第2にインフォームドコンセントを徹底し、要請に応じなくても不利益な扱いをしないことを明確にした上で、要請をするということが考えられます。

いずれにしましても、融資をしているということは、融資先企業との関係では優越的な地位があると認定されやすい状況にあるので、融資関係を盾に何らかの要請をする際には、それが優越的な地位を濫用してなされたものであると認定されないよう十分な配慮をする必要があります。
 
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