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HOMEライセンス契約に関わる問題標準必須特許と差止め

一定の場合には支配的地位の濫用に該当する可能性があります!

ライセンス契約に関わる問題
Huawei事件

日本の独占禁止法上、この問題について先例的価値のある判断を示したものはありません。

他方、欧州では、Huawei Technologies Co. Ltd v ZTE Corp., ZTE Deutschland Gmbh事件において、2014年11月20日に示された法務官意見が重要な先例的価値があります。

それによると、FRAND条件により、ライセンスを付与することを標準化機関に確約している場合、当該標準必須特許権者が、侵害者が客観的に見てライセンス契約を締結する準備ができており、その意思があり、それが可能である旨を示しているにもかかわらずその確約を履行しない場合には、標準必須特許の侵害差止請求はTFEU条約102条との関係で、市場における支配的地位の濫用に該当するとされます。

したがって、欧州に関わる場合には、『FRAND条件によりライセンス契約を締結する準備ができている』と言えるのかを確認することが極めて重要であると言えます。

モトローラ事件

2G、3G、及び動画圧縮技術及び無線LAN技術の標準であるH.246の採用に際して、Motorolaは、従前、FRAND条件により、これらの標準実施に必要な特許権の使用を許諾することを確約していました。Apple及びMicrosoftの苦情申立てに基づき、2012年4月3日、欧州委員会は、Motorola Mobility Inc.に対する正式な審査を開始しました。欧州委員会の嫌疑は、MotorolaがFRAND確約を遵守せず、標準の実施に必要な特許権を主張して、Apple及びMicrosoftの基幹商品の販売差止訴訟を提起することで、支配的地位を濫用している可能性があること及びMotorolaが有する標準の実施に必要な特許権の特許使用料の設定は不公正であり、支配的地位を濫用するものであって、いずれも、TFEU条約102条に違反する可能性があるというものでした。

欧州委員会は、2013年5月6日、Motorolaに対して異議告知書を送付し、2014年4月29日、EU条約102条違反を認定し、排除措置命令を発令しましたが、制裁金納付命令を発令しなかったものです。

欧州委員会は、TFEU条約102条違反の事実について、Motorolaが支配的地位を有することを認定した上で、Motorolaは必須特許についてFRAND条件によりライセンスすることを確約し、アップルは、ドイツの裁判所により判断されたFRAND条件によるライセンス料によりライセンスを受け、これに拘束されるにもかかわらず、差止訴訟を提起して、使用差止めを求めたこと、差止訴訟の提起を仄めかし、アップルに対して、同社の携帯端末製品がMotorolaの標準必須特許を侵害するか否かについて争う権利を放棄するよう求めたことが、いずれも、TFEU条約102条の濫用行為に該当すると認定しました。当該認定に基づき、欧州委員会は、濫用行為を止めるよう命ずる排除措置命令を発令したものです。他方、欧州委員会は、類似案件で制裁金を賦課した先例が存在しないこと、加盟国裁判所の判断も統一を見ていないことを理由として、制裁金賦課決定を発令しませんでした。

2014年3月28日付けガイドライン

なお、差止訴訟の帰結としては、クロスライセンスが考えられるが、この点、欧州における基本ガイドラインである2014年3月28日付けのガイドラインは、以下の通り指摘する。

『当事者が相互にライセンスを交わし、第三者へのライセンスを制限することを含め、彼らの技術の使用に制限を課す和解契約は、第101条1項の対象となる可能性がある。当事者が相当な程度の市場支配力を持ち、その契約が、一括適用免除を解除するために必要とされるものを明らかに超える制限を明確に課す場合、たとえそれが相互の妨害的立場が存在する可能性があるとしても、協定は第101条1項の対象となる可能性が高い。第101条1項は、当事者が市場を共有する場合、または市場価格に重大な影響を与える相反するランニングロイヤルティを修正する場合に適用される可能性が高い。和解契約の下で当事者が互いの技術を使用する権利を有し、その協定が将来の発展にまで及ぶ場合、契約が当事者のイノベーションへのインセンティブに与える影響を評価することが必要である。当事者が相当な程度の市場支配力を有する場合には、協定が当事者が互いに対して競争上の主導権を獲得することを妨げる第101条1項の対象となる可能性が高い。一方の当事者が他方よりも競争上の優位性を獲得する可能性を排除または実質的に減少させる契約は、イノベーションする動機付けを減少させ、競争プロセスの本質的な部分に悪影響を及ぼす。 そのような契約もまた第101条3項の条件を満たす可能性は低い。制限が第101条3項の第3条件の意味の範囲内で不可欠であると考えることができることは難しい。契約の目的の達成、つまり、当事者が他の当事者によって妨害されることなく彼ら自身の技術を利用し続けることができることを保証することは、当事者が将来のイノベーションを共有することに同意することを要求しない。しかし、ライセンスの目的が当事者がそれぞれの技術を開発することを許可することであり、ライセンスが同じ技術的解決策を使用するように導いていない場合、当事者が互いに対して競争優位獲得することを妨げられない。そのような契約は、他の当事者による将来の侵害の主張を妨げることによってデザインの自由を生み出す。』
 
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