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HOMEライセンス契約に関わる問題独占的地位の維持強化

特許権を有していることを利用して、競争上、有利な地位を維持強化しようとすると、独占禁止法に違反し、排除措置命令や刑事罰の対象になる場合もあり得ます!

ライセンス契約に関わる問題
問題点とリスク

『F製品の有力な製造販売業者I社の保有する特許が業界の事実上の標準になっており、当該特許のライセンスを受けなければ当該F製品の製造をすることが困難となっている状況の下で、I社が当該特許のライセンスの条件として同社の製造する他のG製品の購入を要請し、G製品の競争品の製造販売業者が市場から排除されてしまった。』

『E製品の有力な製造販売業者K社はE製品の製造に係る特許等を有していたところ、これと異なる製法を用いた安価な外国製のE製品の輸入を阻止する目的で、他社が所有する関連製法特許を買い集め、外国の製造業者に対して特許侵害訴訟を提起するなどして外国製のE製品の輸入を阻止した。』

上記のような行為に見覚えのある方は要注意です。

上記の行為は、場合によっては、私的独占に違反しているとして、公正取引委員会から排除措置命令や刑事罰の対象になる可能性があります。

なお、刑事罰は、担当者個人について3年以下の懲役刑又は500万円以下の罰金刑、法人については5億円以下の罰金刑であり両罰規定になっています。

特許権については排他権が認められており、特許権の行使と認められる範囲では独占禁止法違反は発生しませんが、特許権を行使していることを口実に競争を制限しようとするような場合には、独占禁止法違反が問題になってきてしまいます。

特許権は本来企業の競争力を高めるために取得するもので、特許権の行使や特許権を価値のあるものにしようとするあまり、独占禁止法違反となり、『独占禁止法に違反した企業』というレッテルが貼られてしまったり、排除措置命令の対象になったり、場合により刑事罰が課されるようなことになれば本末転倒です。

特許権を有していることによる有利な地位を維持したり強化しようとするあまり、独占禁止法に違反してしまうような事態はすべからくこれを避ける必要があります。

問題点の解決方法

第1に特許権に基づく独占的な地位を利用して競争相手を市場から排除する効果を有する行為をすることはすべからくこれを避ける必要があります。そもそも、故意にこのような行為に従事するのは言語道断ですし、仮に競争相手を排除するという認識がない場合でも、独占的な地位にあるものの行為により競争相手が市場から排除された場合には、多くの場合、独占禁止法違反の違法行為を故意に行ったと疑われてしまいます。このような事態はすべからく避ける必要があります。

第2に、詳細な市場分析に基づき、関連市場において独占的地位にあると認定される市場占有率(概ね80%ほど)を有しているか分析し、独占的な地位にあると認定される場合には、市場からの排除行為を控えるという方法があります。しかし、この方法は、まず、市場分析はそもそもそれほど容易ではない上、仮にこの点をおくとしても、関連市場の確定により市場占有率は簡単に変わってしまうという危険性があります。よって、この方法は、実践的な方法とはいえません。

なお、いわゆる標準必須特許に関するホールドアップ問題について重要なのが、ランバス事件です。ランバス社は、パソコン等に使用されているDRAM(dynamic random access memory)と呼ばれるコンピューターチップの製造メーカーであり、DRAMの業界標準設定団体であるJEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)のメンバーでした。JEDECは標準設定にあたっての方針として、可能な限り特許技術が標準設定に組み込まれないようにし、仮に組み込まれた場合でも、特許使用料が無料か、公平に利用できるようにするとしていたものです。ランバス社は、自社の技術について積極的に特許権を取得しようとしていたにもかかわらず、これを秘してJEDECにおけるDRAMの業界標準設定のための議論及び活動に4年以上も参加していました。最終的には、JEDECが設定したDRAMの業界標準としてランバス社が特許を有するに至った技術が組み込まれました。なお、JEDECは、標準設定のための議論及び活動に参加していたメンバー各社に対して、特許技術についての情報開示が重要であることを伝えた上で、積極的に、特許技術についての情報を開示するよう求めていました。それにもかかわらずランバス社は、業界において優位な地位を確立するために、JEDECに対して、自社の特許情報を故意に開示しなかったものです。ランバス社の行為の結果、ランバス社の特許技術はJEDECの設定した業界標準設定に組み込まれ、標準設定後、ランバス社は、JEDECの他のメンバーに対して自社の特許技術を侵害したことを理由に特許侵害訴訟を提起し、当該訴訟の過程で、自社の特許技術がJEDECの設定した標準に組み込まれるに至った経緯について明らかにしました。JEDECが定めたDRAMの標準設定にかかわるランバス社の一連の行為は、DRAMに関係する関連市場における独占的な地位形成に向けられたものであり、シャーマン法第2条の排除行為として同法及び連邦取引委員会法第5条前段に違反しないかが問題となった。また、その一環として、ランバス社の証拠隠滅行為が問題となりました。

ラムバス社は1998年外 部の弁護士のア ドバイスの下で 「文書管理規定」を導入したところ、その規定によれば、 5年を経過 した社内文書は破棄することができるとされていました。ラムバス社ではこの社内規定により、関連文書が大量に処分され、その中にデイスカバリーで開示を免れる秘匿特権付文書も含まれていました。このような、大量かつ意図的な証拠隠滅行為につき、インフイニオン訴訟りの差戻 し審において、バージニア東部地区地裁は、訴訟に不利 となる文書、特に弁護士と依頼者の間で交わされた秘匿特権付文書を処分するために文書管理規定が利用 されたと認定し、秘匿特権付文書の証拠開示を命 じました。同地裁は、サムソン電子対ラムバス事件でラムバスに証拠湮滅があつたと認定しました。

ラムバス社は、外部弁護士の助言のもとに文書管理規定を1998年初頭に改変 し、同 年7月から施行しました。98年9月に、会社全体で 「シユレッダーデイ」を設け、8月には膨大な量の文書を処分し、2000年12月に新 しい社屋に移転する際、同程度の分量を破棄しました。その一環として、電子メールを消去 し、コ ンピュータのバックアップテープも破棄しました。外部のビンセント弁護士に対 しても、事務所の出願関連ファイルを破棄するように指示したものです。ラムバス社の幹部および弁護士も文書の破棄を実行しています。破棄された文書にはFTC手続関連のもの、EDEC関連の文書 も含まれていました。クリスプ氏やラムバスの社内弁護士が、後 にEDEC関連の書類 を探そうとしても見つからなかったほどその処分は徹底 したものであった。しかし委員会は、ラ ムバス社の証拠湮滅の有無を立証する必要はないとの判断を示しました。これまでに収集された証拠で委員会の判断が支持されていることがその主要な理由です。
 
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