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特許権者が、ライセンシーに対して特許権をライセンスするに際して、特許製品の販売価格について制限をすることは、独占禁止法違反として、排除措置命令の対象になる場合もあります!
ライセンス契約に関わる問題 |
問題点とリスク
『特許ライセンス契約において、ライセンサーがライセンシーに対して、特許製品の国内における最終製品の再販売価格を制限させた。』
『特許ライセンス契約において、ライセンサーがライセンシーに対して、特許製品の国内における販売価格を制限した。』
上記のような行為に見覚えのあるかたは要注意です。
上記の行為は、場合によっては、不公正な取引方法に該当するとして、公正取引委員会から排除措置命令の対象になる可能性があります。
排除措置命令の対象になると、『独占禁止法に違反した違法行為に従事した企業』というレッテルが貼られることになりますし、排除措置命令が確定すると、民事損害賠償訴訟では、行為の違法性が推定されて敗訴する危険性が高まります。
さらにやっかいなのは、排除措置命令が発令された場合に、当該命令に違反してしまった場合には、刑事罰が適用されることです。刑事罰の重さは、個人については2年以下の懲役又は300万円の罰金、法人については3億円以下の罰金(両罰規定)です。
ライセンス契約などの技術が伴う契約では、排除措置命令の内容を厳格に遵守することは必ずしも容易ではありません。自社としては排除措置命令を遵守しているつもりが、排除措置命令違反を疑われてしまう場合も十分に想定されます。
特許権は本来企業の競争力を高めるために取得するもので、特許権の行使により独占禁止法違反となり、『独占禁止法に違反した企業』というレッテルが貼られてしまったり、場合により刑事罰が課されるようなことになれば本末転倒です。
特許権取引について独占禁止法に違反するような事態はすべからくこれを避ける必要があります。
問題点の解決方法
特許権をライセンスすること自体は権利の行使であって問題を発生させませんが、国内で流通する特許製品の価格に制限を付すると独占禁止法上の問題を発生させます。
このような事態を避けるためには、ライセンシーに対して価格制限に関わる義務を一切課さないことです。
伝統的に価格制限は公正取引委員会の執行の標的ですから、価格に関わる制限は避けて通るのが王道です。
ライセンス契約で足元をすくわれ、『違法企業』というレッテルが付いてしまっては一流企業への道は、遠くなるばかりです。このような事態はすべからくしてこれを避けるべきです。
EU競争法における分析
2014年4月27日付けの技術移転契約に関するガイドラインでは、TFEU条約101条の適用関係について、以下のような判断枠組みを示しています。
『目的による競争の制限は、その性質上、競争を制限する。これらは、欧州連合の競争規則が追求する目的を踏まえると、競争に悪影響を及ぼす可能性が非常に高いため、第101条1項を適用して市場に影響を与えることを目的とする必要はないという制限である
。また、目的別の制限がある場合は、第101条3項の条件が満たされる可能性は低い。協定がその目的として競争の制限を有するかどうかの評価は、いくつかの要因に基づいている。これらの要因には、特に、契約の内容とそれによって追求される客観的な目的が含まれる。それが適用される文脈や市場における当事者の実際の行動或いは行動を考慮することも必要かもしれない
。言い換えれば、特定の制限が競争目的による制限を構成しているかどうかを結論づける前に、契約の根底にある事実及びそれが機能する具体的な状況の調査が必要となる。協定が実際に実施される方法は、正式協定にその旨の明示的な規定が含まれていない場合でも、目的による制限が明らかになる可能性がある。競争を制限するという当事者側の主観的な意図の証拠は、関連要因だが、必要条件ではない。競争の制限をその唯一の目的としているのではなく、他の正当な目的を追求しているとしても、契約は制限的な目的を持っていると見なされる
。使用許諾契約については、欧州委員会は、TTBERの第4条に規定されている競争のハードコア制限のリストに含まれる制限はまさにその目的によって制限的であると見なす
。
協定が目的による競争を制限しない場合、それが競争に対して制限的な影響を与えるかどうかを検討する必要がある。実際の影響と潜在的な影響の両方を考慮する必要がある
。言い換えると、協定は反競争的な影響を及ぼす可能性が高いと言える。使用許諾契約が事実上競争を制限するためには、関連市場において価格、生産高、イノベーション又は製品やサービスの多様性若しくは品質への悪影響がある程度の確率で実際の又は潜在的な競争に影響を与えなければならないため、競争への悪影響の可能性は非常に高いはずである
。当事者のうちの少なくとも一方が、ある程度の市場支配力を保有し、その協定がその市場支配力の創出、維持又は強化に寄与する、或いは当事者がそのような市場支配力を利用する場合、相当な競争制限効果が生じる可能性がある。市場支配力とは、価格を競争力のある水準以上に維持すること、若しくは製品数量、製品の品質及び種類、或いはイノベーションに対して生産性を競争水準以下に維持することである
。第101条1項に基づく特許侵害認定に通常必要とされる市場支配力の程度は、第102条に基づく優位性の認定に必要とされる市場支配力よりも小さい
。
効果的に競争の制限を分析する目的のためには、通常、関連市場を定義し、特に、関係する製品や技術の性質、当事者の市場における地位、競合他社の市場における地位、買い手の市場における地位、潜在的な競合他社の存在、及び参入障壁のレベルを調べて評価することが必要である。しかし、場合によっては、市場での協定に対する当事者の行動を分析することによって、反競争的な影響を直接示すことが可能かもしれない。例えば、協定が価格上昇に繋がった証拠を見つける事ができるかもしれないのである。
しかし、使用許諾契約には、実質的に競争促進の可能性もあり、それらの契約の大部分は実際に競争促進的である。使用許諾契約は、技術の普及にも繋がり、ライセンシーの製造コストを削減したり、新規又は改良製品の製造によって、価値を生み出す。ライセンシーレベルでの効率は、ライセンサーの技術とライセンシーの資産及び技術の組み合わせから生じることがよくある。補完的な資産と技術の統合は、本来は不可能なはずのコスト/生産構成に繋がるかもしれない。例えば、ライセンサーの改良された技術とライセンシーのより効率的な生産資産又は流通資産との組み合わせは、生産コストの削減若しくはより高品質の製品の生産をもたらし得る。ライセンス付与はまた、ライセンシー自身の技術開発及び活用に対する障害を取り除くという競争上の目的を果たす可能性がある。特に、多数の特許が普及している分野では、ライセンサーによる侵害請求のリスクを排除することによってデザインの自由を創造するためにライセンスが頻繁に発生する。ライセンサーが、ライセンシーの製品の販売を妨げるために知的財産権を行使しないことに同意した場合、契約はライセンシーの製品の販売に対する障害を取り除き、よって一般的に競争を促進することになる。
使用許諾契約が第101条1項の対象となる場合、契約の競争促進的効果は、第101条3項の文脈におけるその制限的な効果と釣り合わなければならない。第101条3項の4つの条件がすべて満たされたとき、問題となっている制限付きライセンス契約は有効かつ執行可能であり、事前の決定は要求されない
。ハードコア制限が第101条3項の条件を満たす可能性は低い。そのような協定は、一般に、第101条3項の最初の2つの条件のうちの(少なくとも)1つは満たさない。一般的に、客観的な経済的利益や消費者への利益を生み出すことはない。さらに、そのタイプの契約は、(第三の条件の下で)不可避な検査に受からない。例えば、当事者がライセンスに基づく製品の販売価格を決定する場合、原則として、生産量の減少及び資源の誤流通、ならびに消費者にとってより高い価格につながる。2つの技術の両競合他社の使用可能性から生じる効率を達成するために、価格制限も不可欠ではない。』
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