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HOME企業結合に関わる問題届出・手続に関わる問題欧州委員会に対する合併届出

場合によっては欧州委員会に対する届出が必要になります

企業結合に関わる問題
EU競争法上の届出 
EU競争法は、加盟国間の通商に影響を及ぼす行為に対して適用され、その影響が加盟国内だけの場合は、加盟国各国の競争法が適用されます。

日本企業による合併等がEU市場全体の競争に及ぼす可能性があるときは、EU競争法に基づく届出が必要です。

EU合併規制の対象は、「連合規模を有する集中」です。「集中」とは、合併、株式取得、資産取得、契約その他の方法による支配権の取得と定義されており、かなり広範囲の企業結合を対象としています。その上で、「連合規模」の要件を満たす場合には、欧州委員会に届出をしておかなければなりません。具体的には、次の要件を全て満たす「集中」すなわち、合併や支配の取得がこれに該当します。

@ 関係企業全ての全世界の売上高合計が50億ユーロ超であること。
A 関係企業の少なくとも2企業のそれぞれのEU域内の売上高が2億5000万ユーロ超であること。
B 関係企業のそれぞれがEU域内売上高のうち3分の2超を同一加盟国内で得ていないこと。

また、上記に該当しない場合であっても、次のすべての要件を満たす場合は、連合規模を有するものとして届出の対象になります。

@ 関係企業の全ての全世界の売上高合計が25億ユーロ超であること。
A 関係企業のうち、少なくとも2企業のEU域内の年間売上高がそれぞれ1億ユーロ超であること。
B 3以上の加盟国のそれぞれにおいて、関係企業すべての年間売上高合計が1億ユーロ超であること。
C Bの要件に合致する3以上の加盟国それぞれにおいて、関係企業の少なくとも2企業の年間売上高それぞれ2500万ユーロ超であること。
D 関係企業のいずれもEU域内売上高のうち3分の2超を同一加盟国内で得ていないこと。

合併審査は、当該合併による市場支配的地位の形成又は強化の結果として、連合市場又はその実質的部分において、有効な競争が著しく阻害されることとなるか否かという観点から行われます。これは実体審査と呼ばれます。

合併審査にあたっては、市場構造、連合地域内外の現実又は潜在的な競争、市場における当事者の地位・経済力、関連商品の需要動向、参入障壁、消費者の利益となる技術進歩と経済発展などの要因が考慮されます。なお、実質審査については、水平合併ガイドラインと非水平合併ガイドラインがありますが、後者については、近年、改正されました(経緯・内容については、こちらを参照)。
 EU外国補助金規制に基づく届出
2023年10月12日から、外国補助金規制に基づく届出規制が施行されており。特定の閾値を超える企業結合(合併、買収、及びフルファンクションの合弁会社の設立)及び大規模な公共調達については欧州委員会への届出が必要となりました。

基本法令は。委員会規則2022年2560号です。

外国補助金規制に基づく届出基準及び罰則等

企業結合についての届出基準は、@対象会社、フルファンクションの合弁会社又は合併当事者のうち少なくとも1社が、EU域内において設立され、EU域内での総売上が5億ユーロ以上、A契約締結等の前3年間において第三国から受けた資本的貢献の総額が5000万ユーロ以上であることです。なお、資本的貢献を受領した対象は、企業結合の対象法人に加えて、いわゆるグループ会社を全て含むことが大前提です。ここには、究極的な親会社及び第三者の共同支配(common contro)lの対象となっている合弁会社も含まれることが前提です。

なお、上記で言う合弁会社ですが、合弁会社の売上は、完全なグリーン・フィールド合弁会社の場合には、合弁会社そのものの売上を考慮し、親会社の売上を考慮しません。また、域内設立には子会社の設立や恒久的事業施設の設立も含む概念です。

資本的貢献とは、資金又は債務の移転、本来であれば支払われる歳入の放棄、商品又はサービスの購入を含む広い概念である。第三国の公共サービスの利用、例えば電気やガス・水道などのutilityの利用も含まれるので注意が必要です。

次に、大規模な公共調達ですが、@公共調達契約の推定額が2億5000万ユーロ以上、かつA入札者(及び関連会社)が届出前三年間に受け取った資本的貢献が第三国一国当たり400万ユーロ以上の場合であることです。上記の関連会社の範囲には、企業グループ内の持株会社及び関連する子会社だけでなく、入札書類一式提出時に判明している入札事業者の主要な下請事業者及び供給事業者を含むことが前提です。

報告の程度には差異があります。

@個別の資本的貢献が100万ユーロ以下の場合
資本的貢献の内実について報告の必要ありません。
A個別の資本的貢献が100万ユーロ以上かつ以下の域内市場を最も歪曲する可能性が高いカテゴリーに該当する場合
詳細な報告が必要です。
・実行可能な再建計画がなく、補助金がなければ短期的又は中期的に倒産する可能性がある経営不振企業に与えられる外国補助金
・債務又は負債に対する無制限保証
・OECD公的輸出信用アレンジメントに準拠していない輸出金融措置
・特定の企業結合を直接的に推進する外国補助金
・不当に有利な入札を可能とする外国補助金
なお、詳細報告が必要となる場合には、以下のような情報を報告する必要があります。
・資本的貢献の形態、金額、目的、経済的な合理性、条件、主要な要素及び特徴(借入れの場合には、金利や融資期間)
・裏付書類
・法律上又は事実上の便益
・正当化理由
・潜在的な競争促進効果
B上記@又はAに該当しない資本的貢献で、国単位で@特定の集中について4500万ユーロ以上、A特定の公共調達について400万ユーロ以上
簡易な報告で足ります。簡易報告の場合には、国毎に、受け取った第三国からの資本的貢献の推計総額の大まかな範囲を示すとともに、資本的貢献のカテゴリー毎に説明を記載することで足り、裏付け資料の提出は必要有りません。

2024年2月10日現在の実務による限り、大半の事案は、報告の必要がないか簡易報告に該当する資本的貢献ですが、詳細報告が必要となる場合には、相当程度の作業負荷がかかることとなると思われます。

なお、申請対象取引であるにもかかわらず申請をしない申請懈怠や届出後審査開始となったにもかかわらず、審査終了を待たずに取引を進めた場合には、グループ全体及び世界全体での年間売上の10%を超えない制裁金の対象となります。なお、届出対象とならない企業結合や公共調達も職権調査の対象となります。公共調達の職権調査は、締結済みの契約に限定され、契約の取り消しや契約の終了に繋がるものではありません。また、職権調査は、いかなる場合も、事業者による取引等の停止義務は生じさせません。

職権調査について

EU競争法上の企業結合規制に基づく届出同様、欧州委員会は、外国補助金規制についても職権調査権があります。届出制度の閾値を下回る企業結合や公共調達も調査対象となります。調査対象は、規則発行前5年間を含む調査開始前10年間(公共調達については3年間)に付与された補助金が対象です。公共調達についての調査は、締結済の契約に限定され、契約の取消しや契約の終了を命ずることはありません。また、職権による調査は、いかなる場合も、事業者による取引停止義務を生じさせるものではありません。

実体審査について

実体審理では、EU域内市場の歪曲性の有無や程度が分析・審査の対象となります。外国補助金が受領者の競争上の地位を向上させる可能性があり、これによりEU域内市場における競争に実際又は潜在的な悪影響が生じる場合に、市場の歪曲性が認定され、具体的には、外国補助金の額、外国補助金の性質、企業の状況(規模、、関係する市場・セクター等)、外国補助金の目的、条件及び域内市場での用途等を考慮して判断されます。

以下については、域内市場を歪める可能性は低いとの推定を受けます。
・外国補助金が3事業年度連続で合計400万ユーロ以下
・外国補助金が3事業年度連続で第三国一カ国あたり200万ユーロ以下
・外国補助金が自然災害や異常事態による損害を填補するものである場合

他方で、以下については歪曲の可能性がい類型です。
・実行可能な再建計画がなく、補助金がなければ短期的又は中期的に倒産する可能性がある経営不振企業に与えられる外国補助金
・債務又は負債に対する無制限保証
・OECD公的輸出信用アレンジメントに準拠していない輸出金融措置
・特定の企業結合を直接的に推進する外国補助金
・不当に有利な入札を可能とする外国補助金
 
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