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HOME企業結合に関わる問題実体審査に関わる問題株式所有による結合

一方の会社が他方の会社の支配権を獲得する場合、2つの会社が共通の会社の支配下に置かれる場合、2つ以上の会社が共同して1つの会社を支配する場合に、株式保有により結合関係が形成されたと認定される場合があり得る!

企業結合に関わる問題
企業結合に対する独占禁止法上の規制の中心は、その結合が、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」に該当するか否か判断することにあります。

その判断の前提として、従前は独立して事業活動を行っていた会社が他の会社の株式を保有することにより、両社間に結合関係が生ずる場合の形態としては、一方の会社が他方の会社の支配権を獲得する場合、2つ以上の会社が共通の会社の支配下に置かれる場合、2つ以上の会社が1つの会社を共同して支配する場合の3つが考えられます。

公正取引委員会のガイドラインによると、会社が他の会社の株式を保有する場合に、保有会社と被保有会社の間に結合関係が生じる(形成・維持・強化される)のは、次の場合であることを明示しています。
@ 議決権保有比率が50%を超える場合
A 議決権保有比率が25%を超え、かつ、その順位が単独で第1位となる場合
B 共同出資会社の場合

2つの会社がある会社の議決権の50%ずつ保有する場合は、50%以上でもなく、単独で1位でもないので、@及びAに該当しませんが、Bに該当することになります。この場合には、出資会社相互間及び共同出資会社間にて結合関係が形成・維持・強化されると分析することになる旨、公正取引委員会も指摘しています。よって、関連市場に対する影響力を分析する場合には、この企業集団の結合関係を前提として分析することとなります。

上記のBは、EU競争法上の「集中」に関するjoint controlの考え方に近いものです。集中は、@合併とA他の企業全体又は一部の直接的又は間接的支配を取得することであり、支配は、事業運営に対する決定的影響力を取得するかどうかにより判断されます。議決権の50%づつを保有する場合には、いずれかの出資者が決定的な影響力を行使することはできないので、共同の支配が成立することになると言われています。事業戦略の策定を単独で行うことができず、共同出資者のコンセンサスが必要な場合はjoint controlの典型例であり、欧州委員会のガイダンスによると以下のような場合が妥当すると指摘されています。
・保有する議決権割合が同一の場合
・少数株主が拒否権を有している場合。なお、判例上、全ての判断事項について拒否権を有している必要はないとされています
・少数株主間に共通利益が存在し、共同して議決権を行使する結果多数を構成できる場合
2021年7月20日付け欧州委員会決定では、IHS Markit及びCMEがそれぞれ50%づつ議決権を保有しており、同数の役員先任権を有していること、双方が選任した役員が出席しないと役員会が成立しないこと、全ての事業戦略についてIHS及びCME側の役員の同意が必要である事実から、joint controlの成立を認定しています。また、2020年9月30日付け欧州委員会決定(M9810)では、拒否権の存在を理由としてjoint controlの成立を認定しています。

なお、概念上、注意すべきものとして、Collective Dominance(共同の支配的地位)というものがある。これは、共同の支配的地位に関わる企業間に一定の関係性があることを前提として、その寡占的協調行為に対して合併規制を適用する際に用いられる概念です。この一定の関係性にについては、徐々に緩和されてきています。この概念の適用用件が正面から問題となった事例が、Airtours事件です。この事件では、3社による寡占的集中を欧州委員会が禁止したものの、欧州一般裁判所がその判断を覆したものです。本件合併で、合併当事者であるAirtoursとFirst Choiceの英国内のパッケージツアーの市場シェアは30%となり、他の2社であるトムソンとトーマスクックが約20〜30%のシェアであって3社で80%、残りの小規模な事業者で20%がしめられる寡占市場が発生するとされました。欧州委員会は、市場が透明で、合併会社及びトーマスクック及びトムソン間に協調効果が生じる可能性が高いので、3者間には相互依存関係によるリンクがあり、このようなリンクは有効競争を制限する共同の支配的地位を発生させると判断して合併を差止めました。一般裁判所は、共同の支配的地位が生じるためには、@共通の方針に従った行為か、あるいは、互いに監視するに十分な市場の透明性が存在すること、A共通の方針を逸脱しないインセンティブが存在すること、B共通の方針により期待される結果が消費者、競争者の予見される反応によって損なわれないことが必要であるところ、本件では、協調行為からの逸脱を特定することは容易ではなく、シーズン中に供給を拡大して報告することはできないし、次のシーズンで報復することは実効性が乏しいとして、共同の支配的地位を認定しませんでした。

上記以外の場合で議決権保有割合が10%を超えるときは、議決権保有比率の程度、議決権保有比率の順位、株主間の議決権保有比率の格差、株主の分散の状況、役員兼任の状況などを考慮して結合関係が生ずるか否かが判断される。なお、議決権保有割合が10%以下の場合には、原則として株式保有による結合関係は生じないとされています。

また、以下の場合には、原則として結合関係が形成・強化されるものではないので、企業結合審査の対象になりません。
・株式発行会社の総議決権の全てを設立と同時に取得する場合
・孫会社の議決権を取得する場合
・兄弟会社間(共通の親会社を持つ会社)で議決権を取得する場合
 
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