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独占禁止法の法律相談.com
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HOME企業結合に関わる問題実体審査に関わる問題株式取得と競争の実質的制限

株式取得により、競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の競争条件を左右することによって、市場を支配することができるような状態を指します!

企業結合に関わる問題
株式取得の場合における競争の実質的制限は、現実に行われている競争を制限する目的で行うカルテル等の場合とは、競争の概念が異なることをまず理解する必要があります。

株式取得の場合についての競争の実質的制限については、日本楽器事件(勧告審決昭和32年1月30日)において明らかにされています。日本楽器事件では、公正取引委員会は、日本楽器が河合楽器の24.5%の株式を取得していることに対して、両社を合わせた市場占有率がピアノで70%になることを主たる判定要素として、ピアノ、オルガン、ハーモニカ各市場で競争の実質的制限が生じるものと認定しました。このため公正取引委員会は日本楽器に対して河合楽器の株式所有比率が9.5%以下になるように保有株式を処分することを命じました。

資本関係が成立しない単なる金銭の貸し付けの場合、日本の独占禁止法上の企業結合規制を前提とすると、企業結合審査の対象にはなりません。これは、日本の独占禁止法の場合には、株式保有、合併、役員兼任、事業譲渡及び会社分割といった一定の類型の取引行為により結合関係が生じて一体化して事業活動を行う場合を審査対象とするためです。「一体化して事業活動を行う強い結合関係」は金銭の貸し付けでは通常生じないというのが立法趣旨です。これに対して、EU競争法の場合、いわゆる企業結合審査の対象となるのは、「集中」であり、これには@合併とA株式又は資産の買収、契約その他の方法であるとを問わず、他の企業全体又は一部の支配を直接又は間接に取得することをいうとされており、金銭の貸し付けも含む概念です。また、支配の取得は議決権株式の割合により機械的に決まるものでもないことには留意が必要でしょう。

EU競争法の重要事例として2006年6月27日付けの欧州委員会決定(Ryanair/Aer Lingus COMP/M4439)が挙げられます。同事件では、Ryanairは公開買付について欧州委員会に対して事前届出する前に、Aer Linguisの議決権付き株式19.2%を購入し、その後、29.4%まで議決権付き株式を買い進めた。欧州委員会は、最終的に株式取得を禁止したものの、既に購入した19.2%については売却を求めませんでした。これは、19.2%の取得では事業運営に決定的な影響力を行使するまでには至らず、支配の取得にまで至っていないと判断したことによるものです。なお、一般裁判所は、決定的な影響力、つまり支配取得は、一連の取引によるのか、一回的取引によるのかを問わないとし、欧州司法裁判所もこのような判断を支持しています。
 
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