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HOME流通取引に関わる問題実体編市場分割合意

不当な取引制限として、場合によっては、課徴金、排除措置命令、刑事罰の対象にもなります!

流通取引に関わる問題
市場分割について合意することも、不当な取引制限の一形態ですので、入札談合や価格協定同様、排除措置命令や刑事罰の対象になります。また、課徴金の対象になることが取引の相手方に対する制限として2005年の独占禁止法改正により明記されました。

公正取引委員会のガイドラインによると、市場分割に該当する行為として、@製造業者が共同して各事業者別にその販売地域を制限すること、A販売業者が共同して相互に他の事業者が既に販売活動を行っている地域で新たに販売活動しないことを取り決めること、B製造業者が共同して各事業者別にその製造する商品の企画・品種を制限すること、C製造業者が共同して相互に他の事業者が既に製造している種類の商品を新たに製造しないことを取り決めることが掲げられています。

なお、購入価格の合意についても、不当な取引制限に該当します。例えば、2008年10月17日、ごみの焼却灰を溶融炉で溶かした際にできる「溶融メタル」を27の地方公共団体から買い取る際、価格を低く抑えるカルテルを結んだとして、公正取引委員会、三菱マテリアル(東京)と子会社のマテリアルエコリファイン(同)に計724万円の課徴金納付を命じています。購入をめぐるカルテルでの課徴金納付命令は本件が最初の事例であり、両社と日鉱環境(茨城県)の3社に排除措置命令が発令されています。3社はDOWAホールディングス(東京)など別の3社とともに2004年3月から昨年7月まで、札幌市や名古屋市などの地方公共団体が銅、金、銀などの金属を含む溶融メタルを売却する際、過去の購入実績をもとに話し合いで購入価格と購入予定者を決めていたもので、カルテルは三菱マテリアルが主導し、各社との連絡調整をしていたものです。

購入カルテルは米国でも違法と判断されます。著名なマカロニ事件判決(National Macaroni Manufacture Association v. Federal Trade Commission, 345 F.2d 421 (7th Cir. 1965))が代表例です。本件においてマカロニ製造業者等は、共謀により、彼等がマカロニを製造する上で、主要な原材料となるデュラム小麦の購入価格をコントロールしようと企図しました。デュラム小麦の成長期において、デュラム小麦の生産業者による小麦の供給量は、価格の変化に対応することができない状態でした。小麦生産業者は、小麦の成長期において、保管その他の方法により供給量を調整することで価格の変化に対応することができない状態であり、弾力性のない状態(Inelastic)でした。高品質のマカロニを生産するためには、100パーセントのデュラム小麦を用いる必要があり、かかる小麦比率こそが、マカロニを調理して料理をする上でも、最も望ましい比率でした。マカロニ製造業者による共謀がなく、自由競争が実現されている状況では、悪天候その他の理由によりデュラム小麦の生産量が減少すれば、価格は上昇するはずですが、共謀により、購入価格は低く抑えられました。

上記の事実関係を前提に、第七巡回裁判所は、以下のとおり判示しました。

すなわち、同裁判所は、「連邦最高裁判所は、以下のとおり判示する。すなわち、価格協定は、シャーマン法の基礎を構成する競争政策に反するものである。また、価格協定は、不合理であることが推定されるため、その違法性は、価格協定が合理的であるか否かとは関係ない。価格協定の参加者の動機が良いか悪いかにも関係ない。価格協定が明らかな契約により締結されたか、あるいはより巧妙な手段により締結されたか否かとも関係ない。協定の参加者が市場支配力を有していたか否かとも関係ない。協定により影響される州間の取引量の大小とも関係ない。合意による効果が、価格を上昇させるものか下落させるものであるか否かとも関係ない。(略)本件における共同行為は当然に違法である。(略)本件記録を全体としてみれば、違法に価格を設定しようとする申立人による一連の行為は、連邦取引委員会法第5条に当然に反する(Per Se Violation)との委員会の認定を十分に支持するものである。」と述べ、購買カルテルも当然に違法となると判断したのです。
(The Supreme Court has held that price fixing is contrary to the policy of competition underlying the Sherman Act and that its illegality does not depend on a showing of its unreasonableness, since it is conclusively presumed to be unreasonable. It makes no difference whether the motives of the participants are good or evil; whether the price fixing is accomplished by express contract or by some more subtle means; whether the participants possess market control; whether the amount of interstate commerce affected is large or small; or whether the effect of the agreement is to raise or to decrease prices…The combination found in the instant case is illegal per se…We hold that under the record as a whole there is substantial support for the findings of Commission that the course of industry action entered into by petitioners, in combination、 to unlawfully fix prices constituted a per se violation of Section 5 of the Federal Trade Commission Act.)

また著名なクリスタルシュガー事件(Mandeville Island Farms, Inc. v. American Crystal Sugar Co., 334 U.S. 219 (1948))も同様の判断を下しています。本件の事実関係の概略ですが、本件当時、北カルフォルニア地域には、砂糖精製業者は3社しかおらず、当該3社は、砂糖きびに対して、均一の価格を支払うことを共謀したのです。かかる合意は、非常に効果的で、砂糖きびの価格を、自由競争が実現されていれば達成されたであろう公正な価格水準を下回る水準に押し下げました。上記事実関係を前提に、連邦最高裁判所は、「たとえ、価格協定が買手によりなされたとしても、また、3倍賠償の制度下で、被害を被ったとされているのが顧客でも消費者でもなく、売主であったとしても、本件合意が、シャーマン法の下で非難を受けるべきことは明らかである。そして、たとえ共謀の最終的な目的が一地方の砂糖きび市場の支配にあることが推認されるとしても、かかる共謀がシャーマン法の適用範囲外であるということにはならない。一地方の市場の独占が、州間の取引制限により達成された場合には、シャーマン法の適用対象となる。」、 「シャーマン法による保護は、消費者、買主、競争業者、または売主に限定されるわけではない。また、違法行為が上記に掲げた者によりなされたからといって正当化されるわけでもない。」と指摘しています。
 
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