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制裁金免除の扱いを受けるためには、申請企業は以下の要件すべてを満たす必要があるとされていました。すなわち、
①申請企業は、以下の2つの場合のうちのいずれかに該当すること。すなわち、第1は、欧州委員会による正式な調査開始を可能にする証拠を最初に提出する申請企業であること。実務的には、免除申請をする多くの企業がこの類型に該当しました。第2は、委員会による違反行為の発見を可能にする証拠を最初に提出する申請企業であること。実務的には、第2類型に該当するのは、容易ではありませんでした。いずれの場合でも、申請企業は、最初に、欧州委員会に申し出た企業でなければなりません。②すべての情報、すべての文書、カルテルについての利用可能な証拠を委員会に提供し、調査期間中継続的で完全な協力を維持すること。③遅くとも申請企業がカルテルへの関与を申し出たと同時に違法行為への関与を終結すること。④当該企業がカルテル参加を他の事業者に強制していないこと。

上記の各要件をすべて充足する申請企業に対しては、制裁金の免除という効果が当然に与えられます。かかる効果が与えられるか否かについては、欧州委員会の裁量に左右されません。

仮に免除の要件に該当しない場合でも、欧州委員会に対して、重大な付加価値(significant added value)を有する証拠を提出した場合で、かつカルテルへの関与を申し出た時点で違法行為を終結している場合には、以下のような順序により、制裁金が免除され得ることになります。条件を満たしたとしても、制裁金の減額という効果を受けることができるか否かは、欧州委員会の裁量によることになります。①最初の申請企業に対しては、30パーセント~50パーセントの減額、②2番目の申請企業に対しては、20パーセント~30パーセントの減額、③2番目以降の申請企業に対しては20パーセント以下の減額という順番と割合で減額がなされ得ることとされました。2002年告示によると、付加価値(added value)とは、申請企業により提供された証拠が、その性質上、欧州委員会が問題となっている事実を証明する際の証明力を高めることであるとされていました。かかる精査において、欧州委員会は、通常、関係のある事実が発生した時期に作成された書面は、後に作成された書面よりも価値が高いと考えるとされ、同様に、欧州委員会は、問題となっている事実に直接関連する証拠は、間接的に関連する証拠と比較して価値が高いと考えると明記されていました。2002年告示によると、上記①から③までのそれぞれにおいて、どの程度の減額が認められるかにつき、欧州委員会は、重大な付加価値(significant added value)という要件を満たすに足りる証拠が提出された時期、付加される価値の程度、申請企業により証拠が提出された後の調査への協力の程度および継続性等の事情を考慮するとされ、なお、仮に、申請企業が提供した証拠が、欧州委員会が知らなかった事実と直接の関連があり、しかもかかる事実が、カルテル行為の重大性と継続性に直接関連する事実を示唆するものであったとしても、2002年告示上、欧州委員会は、証拠を提供した申請企業に対する課徴金の金額を決定する上で、かかる事実については考慮しないとされていました。

Authored by Dr. Inoue

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