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経済的困難な時期にある企業や停滞・衰退産業に属する企業が、欧州競争法において特に問題となることがあります。欧州委員会は、基本的に、危機カルテルに対して寛容な執行姿勢を見せています。この種のカルテルは、構造上の超過生産の問題を前に、必要に迫られ、全生産量を減らすことを強いられる企業や産業セクターが協調することにより発生します。確かに超過生産を減少したり工場の閉鎖を調整したりして競争を制限する協定は、長期的には、職を保護するという社会的観点から好ましい効果を及ぼすかもしれません。しかし、欧州委員会は、このような協定も、原則論としては、81条1項に違反するとしています。危機カルテルを例外的に認める決定では、当事者は、十分な競争が維持された健全な市場を創設するために超過生産を減少することが、協定により、現実に可能であることを証明しなければならないとされています。

危機カルテルは、一般的に、生産力制限、生産量制限、投資制限などの競争法違反を含むことが少なくありません。このため、現実の超過生産力構造が証明されなければなりません。欧州委員会は、そのような超過生産力の条件を、以下のように定義しています。

すなわち、超過構造は、長期間、当該企業がその生産力の重要部分を使用せず、生産力を減少させ、このため著しい開発の現象を経験し、入手可能な情報に寄れば、合理的期間内に改善することが見込まれない場合であるとしています。価格、販売割当、生産割当、市場分割危機カルテルが認められることはほとんどありません。欧州委員会は、超過生産力の現象についての協調だけで、参加企業の個々の決定の自由を奪わず、その産業セクターのほとんどの企業が参加している危機カルテルについて、これを認めることがあります。しかし、欧州委員会によると、すべてのメンバーの業務上の活動をカバーする厳格なルールと、非メンバーからの保護を含む協定は免除されないとしています。欧州委員会は、81条3項は、以下の要件を満たした場合、産業セクター内の協定に適用されるとしています。すなわち、①協定が代替的生産としての再編成プログラムである場合を除いて、閉鎖について強制的で詳細なプログラムを含む場合、②利用者は、選択の自由や参加企業間の競争による利点を奪われない場合、③協定による情報交換制度の設置は、生産力の減少を規制することに資するもので、残存する能力や販売の条件の調整に関する協調的要素とならない場合、及び④協調は、事前に詳細に限定された期間のみ有効である場合がその用件です。

たとえば、亜鉛についての閉鎖協定事件では、欧州における最も大きな亜鉛生産社6社が、全世界での過剰生産と財政困難に遭遇していました。欧州委員会に、一定の生産施設を閉め、新規に創設しないことを同意した旨を届出しました。閉鎖したすべての企業は、社会保障の形で補償を受けました。欧州委員会は、欧州亜鉛産業が財政的にひどく損失を被っていることや一定の期間に限って協定が締結されていることを理由に承認の予定でした。しかし、正式決定の前に、亜鉛市場が改善したため、企業は協定を失効させました。

Authored by Dr. Inoue

意識的並行行為は、米国反トラスト法でも独占禁止法でも問題になる論点ですね。

企業が市場にあわせて価格を調整すると、競業企業は一般的に同様の行動をとります。欧州競争法上、全ての企業は、原則として、共同市場におけるビジネス戦略を独自の判断で決定しなければなりません。しかし、他方で、EC条約第81条は、競業企業間の価格の統一それ自体を禁止しているわけではありません。同一の行為をとることは、それ自体としてEC条約第81条第1項に違反するわけではないのです。

染料事件では、価格を統一する行為が協調行為の存在を伺わせるものであるとしても、それ自体としては競争法違反とならないとされたケースです。欧州委員会は、同時値上げの事実から、染料生産社10社が違法な協調行為をしたと判断したのです。欧州委員会は、様々な要素から制限的な慣行が存在する十分な証拠があり、生産者間の協調が考えられないとすることは非現実的であると判断しました。また、欧州委員会は、染料市場の寡占的構造から、価格競争ではなく、製品の質と顧客への技術的サービスが競争の要素であるという生産者側の主張も一蹴しました。決定の上訴手続で、裁判所はもし意識的並行行為がそれだけでは協調行為とはされないとしても、製品の性質、企業の重要性や数、生産量を考慮し、市場の通常の条件とは一致しないような条件に達するときは、重大な協調の要素とされる可能性があるとしています。

染料市場の性質を決定した後、裁判所は、価格の上昇の点について、特に、時期、価格、製品の同一性を検討し、染料市場における価格の競争上の性質は二次的であるという主張を退けました。裁判所によれば生産者は十分に市場での力があり価格の減少により、市場を拡大することができます。その上、分割された5つの共通市場は、価格も構造も異なる市場で、全ての市場をカバーする恣意的で統一的な価格を設けることは不可能でした。裁判所によれば、異なる加盟国のそれぞれの性質を考えると、異なる価格の上昇が論理的であり、時間、加盟国市場、製品の種類に関して、並行行為が偶然に行われることは考えがたいと結論付けました。

さらに、各製造者は、価格を修正したり、競争者の現在や将来の行為の影響を考慮に入れることはできますが、どのような方法にせよ、値上げについて共同の行為を決定したり、相互の態度について予見不可能性を取り除くことにより、値上げについての協調を確実に成功させるため競業企業と協力することは競争法違反です。

並行行為に関する事件で有名な事件といえばウッドパルプ事件です。そこでは裁判所は3ヶ月ごとに価格設定の事前の宣言をする制度は、市場の通常の条件に対応している限りは、協調行為に該当しないとしましたが、欧州委員会は、生産者がEUにおける価格設定の協調行為を行っていたと主張しました。しかし、1975年から1984年に並行行為があったとしても、価格設定協定の証拠がなかったにもかかわらず、欧州委員会は、直接・間接の情報交換が、価格についての市場の人工的な透明性を創設するするとし、市場の状態は並行行為を生み出すほどの厳格な寡占市場ではないとの経済分析に依拠し、協調行為が存在すると結論付けました。これに対して、裁判所は、欧州委員会の決定を取り消しています。すなわち、裁判所は、使用者に対して宣言された価格についての通知は、競業企業のとるかもしれない行動について、それぞれ企業のとるかもしれない行動について、それぞれの企業の予測不可能性を減少させる性質の行為ではなく、各企業の行動は、実際には、他の企業の態度についていかなる保証もないのであり、3ヵ月ごとの価格宣言制度は、81条第1項に反するものではないと結論付けました。

Authored by Dr. Inoue

 

 

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