支配的地位の濫用の最近のブログ記事

2008年9月16日、欧州司法裁判所が注目の判断について判決を発令しましたね。ギリシアの裁判所が扱う薬品の卸売業者と市場支配的地位にある製造業者間の裁判において、欧州司法裁判所の見解を求められていた案件で発令された判決で、EC条約第82条の解釈が問題になっていた案件です。欧州司法裁判所は、並行輸出取引を阻止する意図で、市場支配的地位にある製造業者が卸売業者からの通常の注文の全てに応じないことは、市場支配的な地位の濫用に当たると判断しました。その上で、本件において、卸売業者からの注文が『通常の注文』といえるかどうかという点の事実認定は、ギリシアの裁判所においてなされるべきであると注釈を付けました。

Reported by Dr. Inoue

欧州競争法において価格差別といえば真っ先に頭に浮かぶのがユナイテッドブラウン事件ですね。この事件では、異なる加盟国市場おける価格差別がEC条約82条の問題になることが明らかにされました。但し、この案件を分析する上で注意しなければならないのは、欧州第一審裁判所は、支配的地位にある企業が欧州域内において統一価格を定めなければならないとしているわけではない点です。ポイントは、同一の場所で購入者によって異なる価格を定めてはならないと述べている点です。その後の事件でも、加盟国間において、合理的な理由にもとづき価格に差異が発生している例について欧州第一審裁判所が問題ない旨分析した事例がいくつかあります。テトラパックII事件の理由中の判断を参照する必要がありますね。無論、テトラパックII事件では、国内市場の人口的な閉鎖事情から、結論として価格差別が違法と判断されています。

Authored by Dr. Inoue

アイスランドの競争当局は、Elimskip社に対して、略奪的価格設定をしたことを理由に340万ユーロの制裁金を課する方針を決めたようですね。制裁金の対象とされる略奪的価格設定は、Elimskip社が2002年4月から実施したとされるもので、Samskip社の顧客を奪うことを目的として価格攻勢をかけたものです。アイスランドの競争当局によると、かかる価格攻勢の結果、Elimskip社は、220万ユーロに上る受注に成功したこと、当時、アイスランドから欧州及び北米への海運にかかる同社の市場占有率は70-80パーセントに達しており、略奪的価格設定を実行することが可能であったという。なお、アイスランドの競争当局は、2002年から略奪的価格設定の調査を開始したものの、制裁金賦課まで5年間の期間を要したものです。

Reported by Dr. Inoue

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