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EU競争法上、市場分割カルテルは、EC条約81条第1項Cに該当します。欧州委員会は、市場分割カルテルに対して、伝統的に極めて厳格な執行態度をとり続けています。

市場分割カルテルに対する厳格な執行姿勢が注目を集めたのが2007年初頭のガス絶縁開閉装置国際カルテル事件です。この事件は衝撃的な案件でしたが、欧州委員会の執行姿勢を知っているものにとっては、従前の方針の延長線上の事件であったはずです。

なお、これまで市場分割が問題となった全ての案件に共通なのは、それぞれの関係企業が、他の関連企業の国内市場において販売・輸出を差し控えていた点です。

1969年のキニーネ事件は、欧州委員会が正式決定を下した最初の事件です。当事者は、それぞれの国内市場を各地域生産者にあてがう紳士協定を締結しており、付属文書も紳士協定に添付されていました。協定は加盟国間に跨る販売を抑止するために、企業間の輸出割り当てのほかに価格設定も規定していました。欧州委員会は、価格設定、国内市場の保護、輸出割り当ての分割協定は相互に補完しあうもので、重大な競争法違反であると判断しました。これは欧州委員会が制裁金の判断において違反の深刻性を考慮した最初の決定でもあります。決定に対する不服申立てにおいても、協定は、加盟国ごとに異なる製造者を保護する目的を有していると判断され、欧州委員会の決定をほぼ確認する結果になりました。

市場の地域的割当ては、販売割当、輸出、配達を通して行われます。グラファイト電極事件では、グラファイト電極製造者が市場分割、その分割された市場での割当を設定したカルテルを行っていました。欧州委員会は、割当制度の存在は、商業上の傾向を組織的に変えてしまう効果を有し、あるいはその可能性があると判断をしました。

また、欧州砂糖産業事件では、当事者がそれぞれの市場を保護するように加盟国間で砂糖取引をコントロールしていた慣行が問題になりました。加盟国間取引を回避するために、企業は、その輸入地域の生産者を通してしか供給されないようにしていました。また、この制度では、その地域で生産される砂糖と同一の価格、条件、マークでしか販売することができませんでした。欧州委員会は、これらの市場分断措置は、欧州単一市場の創設という理念に真っ向から反するとして巨額の制裁金を課しています。

Authored by Dr. Inoue

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