2008年7月アーカイブ

2008年7月28日、欧州委員会がかねてから注目されていたUPM-KymmeneとBRISTによるジョイントヴェンチャーの設立を承認しましたね。ジョイントヴェンチャーは、両社が50パーセントづつを出資し、ロシアのボログダにおいて用材やパルプの生産をし、販売することを目的としています。ジョイントベンチャーの営業活動は、UPM-Kymmene及びBRISTと羽目板販売市場で、また、UPMと用材及びパルプ販売市場で水平的に競合するものの、綿密な市場確定及び分析を経た上、いずれの関連市場でも合計の市場占有率が15パーセント以下であることを理由に、市場の支配的地位の創設にはつながらないと判断していますね。

Reported by Dr. Inoue

2008年7月10日、欧州司法裁判所が注目の判断をしましたね。かねてから注目が集まっていた、ソニーとBertelsmann Music Group(BMG)のJVについての欧州第一審裁判所の判断について、欧州司法裁判所は、審理を欧州第一審裁判所に差し戻しました。そもそも、欧州第一審の判断は、ソニーとBMGによるJVの設立を認めるという2004年になされた欧州委員会の判断を覆すものでした。欧州司法裁判所の判断の詳細は、判決全文に譲りますが、判決では、実体分析よりも、欧州第一審裁判所が異議告知書に依拠しすぎて判断していること、欧州委員会が引用できない秘密文書を分析の基礎にして欧州第一審裁判所が判断していることなど、手続的側面に対する分析から結論を導いている点が注目に値するかと思います。

Reported by Dr. Inoue

2008年7月10日、欧州委員会は、加盟国の競争当局とともに、2つの加盟国において、穀物及びその他の農業製品の流通業者に対して立入調査を実施したと発表しましたね。欧州委員会の発表では、EC条約第81条違反の事実があったと疑うに足りる十分な理由があるとのことですが、詳細については、今後の発表を待つ必要がありそうですね。

Reported by Dr. Inoue

2008年7月8日、欧州第一審裁判所は、有機過酸化物カルテル事件についてのAC Treuhand AGの訴えを退け、欧州委員会の決定を支持しましたね。AC Treuhand AGは有機過酸化物を生産しておらず、それゆえ、市場の参加者ではなく、カルテルにおいてもファシリテーターとして活動していたに過ぎませんでしたが、欧州委員会は、AC Treuhand AGについて、EC条約第81条違反を認定したのです。なお、欧州委員会の制裁金賦課決定では、制裁金の金額は1000ユーロとされていました。当該カルテルについては、Akzo Nobel Chemicalが2000年に、制裁金の減免を求めて、欧州委員会に対して、カルテルの存在について、決定的な証拠を提供したことでも話題になりました。

Reported by Dr. Inoue

2008年7月1日、欧州第一審裁判所は、Martime Belgeの訴えを棄却しましたね。欧州委員会は、同社に対して340万ユーロの制裁金賦課決定を発令していたところでした。Maritime BelgeはCentral and West African Shipping Line Conferenceのメンバーであり、同組合は、船賃のレート等を固定しており、通常であればEC条約第81条違反になるところ、ブロックエクゼンプションにより、EC条約81条の適用を免除されていました。ところが、CEWALは、100パーセントの特約リベートを荷主に提供するなど、市場における支配的地位を濫用し、当該濫用行為について、欧州委員会は、EC条約82条違反を認定しました。当初、欧州委員会は、総額1000万ユーロの制裁金を賦課する制裁金賦課決定を発令し、当該決定中の事実認定は、欧州第一審裁判所及び欧州裁判所に支持されたものの、制裁金額については手続的な瑕疵を理由に決定が覆されました。そのため、欧州委員会は、再度、制裁金賦課決定を発令し、当該決定に対してMaritime Belgeが欧州第1審裁判所に対して上訴していたものでした。

Reported by Dr. Inoue

About the Author

Dr. Akira Inoue

欧州競争法を専門とする法学博士・弁護士(日本国及び米国ニューヨーク州)。Baker & Mckenzie GJBJのAntitrust Practice Groupのメンバーの一員である。