EC条約第81条: 2008年1月アーカイブ

独占禁止法及び反トラスト法における分析同様、EC条約第81条の分析の際にも関連市場の確定が必要になります。とりわけ、デミニマスルールの適用に際して、関連市場の確定は不可欠です。欧州委員会が2001年に発表した告示によると、企業の市場占有率から重要性の低さを分析するという手法を取っています。市場占有率を算出する前提として、関連市場を確定することが必須です。欧州委員会は、企業の市場占有率が、水平的契約で10パーセント、垂直的契約で15パーセントを超えない場合には、81条第1項の適用を免れるとしています。告示では、複数の製造者・契約者によって類似の契約が並行して締結された市場においては、市場閉鎖効果のため5パーセントの基準を設けています。告示によれば、市場の30パーセント未満が並行契約によってカバーされている場合には閉鎖効果はあまり考えられないとしています。

Authored by Dr. Inoue

情報交換、それ自体は、反競争的ではありません。それ自体が直ちに違法とはいえない点で米国反トラスト法及び独占禁止法上の考え方と同じです。

よって、競争業者と情報交換をしたからといって、ただちにEC条約第81条違反として摘発の対象になるわけではない。

しかし、競争企業がそれぞれの活動について情報を交換することは商業戦略に大変有利といえます。そのため、情報交換のうち一定のものについては、欧州競争法上も問題となりえます。問題となるのは、市場において企業の態度を調整するような協定です。個々の企業の独立した決定や、通常の競争の作用を企業間協定によって取って代わるようにするもので商業上の情報の交換は、情報が実際には業務上の秘密であり、定期的な統計を取る必要がないものであれば、EC条約第81条第1項違反に該当するので、注意が必要です。

とりわけ、クルス委員の2007年12月11日のプレスステートメントでは、2008年以降も強力にカルテル摘発を推進する方針が示されており注意が必要です。情報交換協定についても、審査の対象とされる可能性が十分にあるためです。

Authored by Dr. Inoue

 

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