審査手続: 2007年12月アーカイブ

欧州委員会におけるOral Hearingについては以前にも解説したところですが、今回は、もう少し、実務的ないし実際上の経験に基づく解説をしたいと思います。

Oral Hearingは通常1回だけ開催され、その期間は非常に短いです。多くの場合は1日で、半日のこともあります。複雑な事件では2日にわたることもありますが、極めて例外的です。なお、マイクロソフト事件のときは3日かかったそうです。

Oral Hearingまでに当事者は自由に書面を交換することができ、実際上は、この書面交換により議論は尽きているとみなされています。Oral Hearingでは当事者が、お互いの主張を持ち時間の中で整理して主張するだけですから、セレモニー的な色彩が強いといえます。実際上も、日本における裁判の口頭弁論や、Adversary Systemを採用している米国における手続とは相当程度勝手が異なるという印象が少なくありません。Oral Hearingでは、Hearing Officerが手続を開始し、まず、case teamに事実及び欧州委員会の法的構成についての主張の要約を行わせます。その後、当事者の口頭によるプレゼンテーションが行われます。Oral Hearingにおいて、Officerは証拠の実体面について判断をすることはありませんが、コメントすることはあります。Hearingでは、各国のOfficerが出席しており、通訳を介して、当事者のプレゼンテーションを聞く機会が与えられます。各国のOfficerから当事者に質問がなされ、当事者がこれに回答をします。最後に、欧州委員会及びHearing Officerから当事者に対して質問がなされ、当事者がこれに対して回答します。反対尋問権は保障されていませんが、Hearing Officerに対して、関係者に質問をするよう求めることができますし、手続がヒートアップすると、Hearing Officerを介さずに直接質問と回答がなされることもままありますので、事実上、反対尋問をする機会があるといえます。

Hearing Officerは手続上の判断権限を有しているだけで、作成するレポートも手続的観点を中心としたコメントのようなもので、決定書を起案する際の基礎を構成しているとは思えないものです。

このように欧州委員会におけるOral Hearingは、行政手続の一環として最低限の手続保障だけを狙った手続であり、日本における刑事訴訟のような手厚い手続的保護が図られている手続とは異なる、どちらかというと形式的な手続といえます。

Authored by Dr. Inoue

国際フォワーディングカルテルの審査では、今後、答弁書が提出され、聴聞手続が実施されますが、欧州委員会の審査手続では、書面が重視され、聴聞手続は補助的な位置づけであるのが実務的な扱いです。よって、欧州委員会の異議告知書記載の事実に対して争う場合には、答弁書と証拠の提出が極めて重要です。

聴聞手続では不服申立人も意見を述べることができます。また、他の第三者も十分な正当な利益を証明できれば、聴聞の機会を認められます。欧州委員会は、意見を聞くため必要なものは誰でも聴聞に出席させることができます。

当事者は、代理人を選任することが可能ですが、原則として自分で聴聞に出席することが義務付けられています。異国の地での手続は非常に緊張するので、日本企業の担当者が聴聞に出席する場合には、十分なリハーサルが欠かせません。聴聞は公開ではありませんが、加盟国の競争当局職員も参加することが可能です。

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異議告知書に対する答弁書が提出された後、所定の期日に口頭での聴聞が実施されます。

聴聞は、聴聞官(Hearing Officer)が主宰し、当事者及び加盟国競争当局の担当官が出席します。

上記の者以外にも、違反行為の申立人が書面で期日における意見表明を希望し委員会が適切であると認めた場合)、十分な利害関係を示した第三者につき期日での意見表明が適切であると委員会が認めた第三者、当該事件について書面で意見表明をなし、期日に参加を希望する第三者に口頭での聴聞において意見を述べさせる場合には第三者も聴聞手続に参加できます。

期日においては、事実及び欧州委員会の主張の要約の告知、第三者の意見陳述、当事者の主張、紙国競争当局の質問、欧州委員会及び聴聞官からの質問がなされ、通常1日で終了します。

聴聞官には独立性が保障されています。しかし、欧州委員会の職員であることには変わりはなく、聴聞手続は当事者主義的なものではなく、糾問的な手続です。したがって、民事訴訟の口頭弁論におけるような反対尋問を含む証人尋問のような場ではありません。委員会の事実認定は原則として書面主義であり、聴聞手続は、デュー・プロセスの原理に基づく防御権を直接主義の観点から補完する手続と位置づけられています。

聴聞の実施後、委員会は決定案の諮問委員会への諮問を経て制裁金について正式な決定をします 。聴聞手続は、異議告知書の送付から原則半年、長くても1年以内に終結し、正式な決定がなされます。

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欧州委員会による審査手続の概要は、独占禁止法下での概要と似ていなくもありません。

欧州委員会は、①欧州委員会からの委任により、又は②委員会の決定により、立入検査(具体的には敷地・施設等への立入、帳簿その他の営業に関連する記録の検査、これらの記録のコピー又は抜粋の取得、検査に必要な限りでの設備・記録の封印、事業者の従業員やその代表者に対する質問)を行うことができます。

また、重大な違反行為の立証に関連する記録が存在するとの合理的な疑いがあれば、委員会は、役職員の自宅を含む他の施設・土地等につき決定により立入検査を行うことができます。実際、役員の自宅や自家用車の中にまで立入検査が実施された例があります。

①は加盟国への事前の通知により可能であり、検査に応じないこと自体につき制裁金は科されません。②は加盟国との協議により実施し、検査に応じない場合には制裁金が科されます 。また、その実施の決定は、控訴裁判所の司法審査に服する。①か②かの選択は委員会に委ねられています。

さらに、決定による場合、決定で定める範囲で、調査に協力する義務を負っており、事業者の従業員やその代表者に対する質問にも誠実に答えなければならず、回答が不完全であったり、回答を拒絶すると制裁金が科されることとになります。特にカルテル事件の場合には、このような検査に対する非協力的な態度は回答拒絶等による制裁金の不利益にとどまらず、カルテルに対する制裁金の増額事由となりうるので、厳に慎まなければなりません。

上記いずれの検査であっても、それ自体としては直接的な強制手段は認められていませんが、検査実施国の国内法に基づき警察等の助力を得たり、裁判所の令状を得て検査を行うことが可能です。

なお、欧州においては弁護士の立会権は認められていますが、立入検査開始の要件ではないため、特に事業者が法務部門を有している場合には弁護士の立会なしに検査が開始されるのが通常です。また、欧州においては、弁護士・顧客間の通信文書の秘匿が認められていますが、秘匿に対象となることを主張しなければ本来手元に残るべき書類までも押収されます。

欧州委員会による立入検査は、一般に、dawn raidと呼ばれていて、多くは、早朝、実施されます。欧州では弁護士事務所のみならず、dawn raidへの対応を専門に請け負っているコンサルタントまでいます。それほど、dawn raidへの適切な対応は重要性が認められているのです。

他方で、情報請求は、立入検査と同様、①単に任意の請求をするにとどまるものと②制裁金による間接強制が可能な決定によるものがあります。情報請求は書類の提出のみならず質問への回答を含みます。また、欧州外の書類・情報についての請求も対象となります。また、特に②の請求に関しては、その拒絶等非協力的な対応が制裁金の増額につながります。特に注意を要するのは、情報提供は通常、違反行為の当事者以外の者に対してなされますが、例えば調査対象事業者の競争事業者として情報請求を受けたが、調査の進展に伴い、調査の対象とされることがあることです。このような場合には当初に非協力的な対応を取っていたために後に制裁金が増額することとなりかねません。したがって、情報請求を受けたにとどまる場合でも、並行して違反事実の有無の調査が必要となります。

2003年理事会規則1号により、同意を要する任意ベースではありますが、個人又は法人(の役職員)にインタビューして調書を作成することが認められるようになりました。インタビューの冒頭では、インタビューの法的根拠、目的、インタビューを記録する旨、回答が任意である旨を通知されます。インタビューは記録され、記録のコピーについては、インタビューされた者により一定期間内にその正確性の確認を要することとされていますが、実際には、米国のディスカバリーの対象とならないよう、録音機による録音の手法がとられるのが一般です。

Authored by Dr. Inoue

EUにおいては、EC条約81条又は82条違反の事件の処理のために、欧州委員会と各加盟国の当局との間又は各加盟国の当局間で、収集・取得した情報及び資料の交換が予定されています。

リニエンシーの申請に際し違反事実及び証拠を提出して当局に協力した申請事業者のインセンティブを確保し、カルテル摘発の実効をきたす目的からは、違反企業の役職員といった個人につき、刑事処分の端緒となる資料が欧州委員会から加盟国の当局に対して提供されないことが重要といえます。

2003年理事会規則1号12条3項においては、個人に刑事罰を科すための証拠として情報等を提供することが認められるのは、①情報等を送付する当局の法律がEC条約81条若しくは82条違反に関し、同種の刑罰を予定しているか、又は②当該個人の防御権につき、情報等受領当局の国内法規において認められているのと同様の水準が確保されている方法で収集された場合(身体的拘束による刑罰を科すために使用する場合は情報等の提供は認められない。)に限ると規定されています。そして、欧州共同体においては、EC条約及びこれに関連する規則においては刑事罰は予定されておらず、欧州共同体における情報等取得時に受領国における刑事手続上必要とされる手続的保障と同等の保障が与えられているかにより、罰金刑目的で情報等の提供が認められるかが決せられることになります。

Authored by Dr. Inoue

事件記録の閲覧謄写は、公正取引委員会や連邦取引委委員会での手続同様、欧州委員会での手続でも非常に重要です。

欧州委員会による競争法の運用実務においては、被疑事実が詳細に記載された異議告知書が名宛人に送付されますが、それだけでは手続保障の観点からは十分ではないと考えられています。

すなわち、武器対等の原則及び防御権の保障の観点から、異議告知書に対して十分に反論をするには、委員会が異議告知書という形で示された暫定的な結論及びそれに至った過程をチェックすることが必要であり、そのために、一部の例外を除き、異議告知書の名宛人に対して、異議告知書の送付後に、委員会記録の全ての文書にアクセス(閲覧謄写)が認められています。

このような委員会資料の全面的な開示により、その後の争点の明確化が迅速になされることになります。ここに、「委員会記録」は、検査手続の期間を通じて欧州委員会競争事務総局が取得、作成又は収集した全ての文書であり 、電子情報も含む趣旨です。上記のとおり防御権保障の観点からは、記録中の全てのファイルにつきアクセスが認められるべきですが、他方で、事実認定の基礎とはならない文書や事業者の秘密にまで及ぶ資料の開示を認める場合にはそれに伴って生じる弊害の方が大きい場合もあり得ます。そこで、これまで判例上閲覧謄写が認められていない①内部文書 、②営業秘密 、③その他の秘密 に関する事項については、閲覧謄写はできないこととされています。委員会に対して情報を提出する者は、情報に②又は③の秘密情報が含まれている場合には、理由を付して秘密情報と考える部分を特定して非秘密版(non-confidential version)の資料を別途作成しなければなりません。しかし、この閲覧謄写の例外も自動的に認められるわけではなく、②及び③の類型は客観的な根拠に基づく申立(Confidentiality Claim)により委員会が認めた場合に限られます。また、5年以上前の経営情報や第三者に開示しているような情報については秘密とは認められません。さらに、当該情報が違反事実又は違反でないことの立証に不可欠な場合で、防御権保護の利益が秘密保護の利益を上回る場合にはなお、閲覧謄写が認められます。閲覧謄写の申請があった場合には、委員会は委員会記録の文書のリストを提供するとともに、CD-ROMその他の電子的記録媒体、コピー又は委員会の施設内でのアクセスのいずれかの方法でアクセスを認めるが、異議告知書を発出する際には、リニエンシー申請時のコーポレート・ステートメントを除き、CD-ROMにより提供されるのが一般です。閲覧謄写が認められた資料の用途については、関連する行政手続で問題となっている競争ルールを適用する司法又は行政手続で使用することに限定されます。

なお、上記のように原則として、このような委員会記録の全面的な開示が認められるのは異議告知書の送付後のタイミングで、異議告知書の名宛人に限られるが、例外的に違反行為の申告者につき、その申告が委員会により拒絶された場合に当該申告者に対して委員会記録の開示が認められます。

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欧州における事前聴聞手続は異議告知書の送達から始まります。

異議告知書の記載事項については、2004年委員会規則773号10条が、関係当事者に関する被疑事実を書面上記載することを求めているのみでその他については特段規定されていませんが、決定で記載する本質的事実及び法令の適用が記載される必要があり、被聴聞者が防御するのに十分な情報を提供することを要するとされています。

すなわち、被聴聞者が十分な反論を尽くし、防御をなすには、被疑事実を含む関連する情報が異議告知書という形で書面上記載されていることが必要です。また、その裏返しですが、委員会は、異議告知書に記載され、被聴聞者が十分にコメントすることができた被疑事実についてのみ決定において取り扱うことができます。かかる観点から、通常、異議告知書においては、リニエンシーを利用する場合であれば、申請者が提供した情報及び証拠を基に、第三者の申告に基づくものである場合には、申告者が提供した情報及び証拠を基に非常に詳細な事実を認定・記載し、認定に用いた証拠を認定事実との関連を示しつつ脚注で参照します。このような詳細な事実の記載は、防御権への配慮という点からも説明できるものですが、他方で、委員会の決定の過程における書面主義という点も指摘できます。委員会の事実認定は異議告知書という暫定的なものですが、調査手続により収集した書証、物証を中心になされ、聴聞は、民事訴訟における証人尋問とは異なり反対尋問権が保障された場ではなく、むしろ反論を陳述する補完的な場であると位置づけらています。

異議告知書は違反事実を行ったと委員会が認定した者に送達されます。

そして、異議告知書の名宛人は一定期間内に、記載された被疑事実に対する防御に関する事実を答弁書に記載して、当該事実を立証する証拠とともに提出することができます(異議告知書においては、答弁書の提出期限及び聴聞の予定期日が併せて記載されています。)。この場合、特に問題となるのは、リニエンシーの申請をしなかった違反行為の当事者である。答弁書を提出するまでの期間は、事案の複雑さ等により異なるが、通常、6週間から3ヶ月と短期間です。しかし、当該事業者としては、事件の見通しを立てた上で、詳細な社内調査及び後述の膨大な委員会記録の精査を実施し、最終的なスタンスを決定しなけければなりません。既に述べたように、異議告知書においてはリニエンシーの申請者からのそれなりに有力な証拠を基に詳細な事実が既に認定され、しかも委員会の事実認定は書面主義が基本であることを踏まえると、制裁金の増額事由である検査への非協力に該当せずに異なる事実を主張するには、証明力の高い証拠によることが必要であり、そのためには認定の基礎となった証拠の証明力の精査、詳細な社内調査の実施が必要となります。また、争う事実の事件全体から見た重要性(事案の性質や関与の在り方を根本的に変える事実であったり、制裁金の増減要素に関係する事実か否か)の評価も必要になります。さらに、委員会記録の証拠関係からして、行政処分の段階のみならず後の裁判の段階になった場合の見通しまで必要になるケースもあります。そして、仮に事実の多くを争う方向性であるならば、書面で反論をする機会は基本的には答弁書の提出に限られるのであるから、詳細な反論とそれを裏付ける証拠の提出を答弁書提出のタイミングで行うことが必要となり、必然的に詳細な社内調査の実施と証拠の洗い出しが必要となります。これらを上記の短期間に実施するのは非常に大変な作業であり、現地の弁護士事務所とスムーズに連絡を取れる体制を確保しつつ、共同して作業をしなければなりません。この点においてもリニエンシーを積極的に活用することの重要性が現れているといえます。

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欧州委員会は、審査中に収集した情報を、令状や決定に記載された目的以外に使用してはなりません。しかし、Dow Benelux事件によると、欧州委員会が、ある製品についての事件審査中に得た他の製品についての情報をこの製品の審査を開始するために用いることを禁止するのは、職業秘密と防御権の範囲を超えるものであることを指摘してしており、注意が必要です。

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聴聞手続

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企業は、書面と口頭により、欧州委員会の異議告知書に対する企業の見解を明らかにする権利を有しています。不服申立人も、当事者の聴聞の際に意見を述べることができます。また、他の第三者も十分な正当な利益を証明すれば、聴聞の機会を認められます。欧州委員会は、さらに、意見を聞くために必要なものは、誰でも聴聞に出席させることができます。聴聞は地位の独立を保証された聴聞官によって行われ、この聴聞官は、競争担当欧州委員会委員に直属します。当事者は、弁護士によって代理されることが可能ですが、原則として自分で聴聞に出席することが義務付けられています。聴聞は公開ではありませんが、加盟国競争当局職員も参加することができます。

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欧州委員会は、EC条約第81条及び第82条違反の場合、決定によって当該企業にそのような行為を中止させることができます。しかし、決定が出される前に企業が行為をやめた場合には決定は単に違反を宣言するだけの効力を有するに過ぎません。決定は理由が明確に述べられたものである必要があります。しかし、欧州委員会の理由とする本質的要素を裁判所に明らかにするような明示の一貫したものであれば足ります。欧州委員会は手続中扱ったすべての法的観点及び事実について言及する必要はありません。欧州委員会の命令権は、当事者に違反を止めさせるにとどまらず、違反によす損害を補完するような命令を課することもできます。すなわち、規則上、欧州委員会は企業に違反を効果的に辞めさせる如何なる性質の措置も取ることができることを明示しています。しかし、企業の組織構造を変更する性質の措置は、企業の行動を改める性質の措置がより効果的に義務を課することができない場合にのみ課することができるに過ぎません。

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審査手続を開始した後、欧州委員会は関係する企業に異議告知書を送付しなければなりません。この書類の中で、81条・82条違反の存在を疑う法的事由と、制裁金の対象になるかどうかを明らかにする必要があります。異議告知書は、事件の情報を含むものです。最終的な決定において、欧州委員会は、異議告知書の中で企業に明らかになり企業が反論する機会を与えられた事実に基づいてのみ企業に対する判断を下すことができます。結果として、もし、欧州委員会が後に異議告知書に記された事項を修正したい場合には、新たに異議告知書を出さなければならず、書面あるいは口頭で返答する機会が企業に与えられなければなりません。異議告知書の内容の程度については、裁判所によると、防御権を保護するために異議告知書が本質的な要素を企業に明らかにするものである必要があるとされています。

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EU競争法でも、米国におけるビジネスレビューレター類似の制度が採用されています。企業が今までにない新規の問題でそれに対する解決が明らかにされていない場合には、企業は欧州委員会に対して非公式のガイダンスを求めることができます。その際、欧州委員会は、質問が提起された状況、欧州委員会からのガイダンスの内容およびその効果を明示した文書を採択します。

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審査中に収集された証拠が審査の開始を正当化するものであれば、欧州委員会は正式に手続を開始します。手続開始決定は、競争政策を担当する欧州委員会の職員によります。この決定の結果、加盟国当局との並行審査は不可能になります。また、手続開始は、時効を中断します。手続開始の決定は条約第230条により最終的な決定の準備行為と解され、手続の最終的条件には該当せず、裁判所による判断の対象にはなりません。

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欧州委員会が、競争を制限すると思われる協定や慣行の存在を発見する方法は様々です。欧州委員会自身の審査手続を通じて発見される場合もあれば、不服申立てを受理した結果によることもあります。

欧州委員会の競争政策年報によると、欧州委員会によって受理される不服申立ての数は、減少の傾向にあります。不服申立ては、以前は、小企業が大企業からの侵害からの保護を求めてなされることが多かったといえますが、近年は、大企業も、ライバル企業に対する戦略の一環として、不服申立てをしています。法人、自然人、加盟国は、正当な利益を証明すれば不服申立てができます。欧州委員会は、欧州委員会告示に対応する特別の書式を発表しています。欧州委員会は全ての不服申立てを検討しなければなりません。欧州委員会が、不服申立てに理由があると認めると、不服申立人は手続に参加することを求められます。欧州委員会は、異議告知書を申立人に送り、申立人は書面により意見を述べることができるだけでなく、手続に参加することもできます。しかし、欧州委員会が不服申立てに理由がないと考えた場合には、その理由を不服申立人に明らかにし、書面により意見を述べることができるように期日を設定します。

欧州委員会は、直ちに不服申立てを却下する代わりに、手続を開始し、申立人の主張を退ける最終決定を採択することもできますが、申立人は、これに対して、欧州第一審裁判所に訴えることができます。

欧州委員会は、全ての不服申立てについて、手続を開始する必要はありませんが、競争法の重点、国内レベルの解決手段の存在、違反を証明することの困難などを考慮して、優先順位を設けることができます。欧州委員会が誤った事実に基づいて決定を出したとしても、法的な間違いや明らかな評価についての誤りのみが問題になります。

Authored by Dr. Inoue

2003年以降、欧州委員会による立入権限は強化されています。欧州委員会は、競争法違反が疑われる場合には、企業と企業グループ全体について、必要な調査をすることができます。そのため、欧州委員会職員は、通常、全ての企業の建物内、土地、輸送機関、簿記、他の業務上の書類を調査し、コピーをとり、その場で口頭の質問をします。また、欧州委員会は、審査対象に関連する書類が他の場所に隠されている疑いがある場合には、職員の自宅や役員・職員の車を捜査することもできます。このためには、欧州委員会は、加盟国司法当局から令状を取得しなければなりません。また、欧州委員会は、企業内を封印し、書類について全ての職員を審問し、説明を求めることができます。

欧州委員会が正式な決定を持って要請しない限り、立入検査を拒否したとしても制裁を受けることはありません。正式な決定については、欧州第一審裁判所においてその有効性を争うこともできます。企業が書面による令状にしたがって審査に任意に服しなくても、欧州委員会は、すぐに拘束的な決定を使って立入検査をします。令状が立入検査の対象と目的を記載しているので、企業は容易に審査目的にかなう適切な書類を見つけ出し、欧州委員会職員が必要な権限を越えることなく審査を終了することができます。企業には検査に協力する義務がありますが、もし企業が引き出しを開けることを拒否した場合には、強制することはできず、加盟国当局の助けを借りて、加盟国の手続法に則って引き出しを開けることができるに過ぎません。

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